ペンタの空 (1991年)

少年映画評価 8点
作品総合評価 6点(現実的には有り得ないけどいいじゃないですか)
少年の出番 100%(完全な少年映画)
お薦めポイント ペンギンと一緒に南極まで行った少年
映画情報など 1991年製作。VHSビデオ絶版。
(写真は八百坂圭祐君)


題名は知っていましたが、なかなか見る機会が無かった作品。これが意外な掘り出し物でした。1991年といえばバブル景気最後の年。同じ年に『リトル・シンドバッド』も公開されており、日本人少年がサウジアラビアの砂漠や南極大陸へと駆け回ります。

両作品ともストーリーにはツッコミどころ満載です。貨物船で密航することも違法行為です。それでも。
少年よ大志を抱け。いいじゃありませんか。

はるばるチリの南端の町へ。お金を奪われて疲労困憊。見つめ合うリョウタとペンタ...
(実は足の裏に隠していたお金を忘れていた。)
■ストーリー

南紀白浜に住むリョウタ(八百坂圭祐)は台風の翌日に大きな卵を拾った。近くのアドベンチャーワールドの先生に見せるとペンギンの卵だった。リョウタは養鶏場の孵化器を無断で借りてペンギンの雛をかえし、ペンタと名付けた。リョウタは何もかもそっちのけでペンタを育てる。

両親はペンタをアドベンチャーワールドへ渡そうとするが、リョウタは南極に返すと決心。元捕鯨船の乗組員だった祖父のツテで大阪からチリ行きの貨物船に忍び込む。サンチャゴ日本大使館で保護されたが隙をみて脱走。南極に近いプンタアナレスの町へ。そこで少女サラに助けられ、彼女の父の空軍機で南極へ...(出来過ぎです)

■南紀白浜でのリョウタ

映画は成長してパイロットになったリョウタがチリを再訪するところから始まります。サラと一緒にまた南極へ。数分あまりの出演。この大人役の山下規介さんが本作の主演扱い。しかしここで明言します。本作は完全に八百坂圭祐君主演の少年映画です。

さてペンギンの卵。なぜ南紀白浜の岸にたどり着いたのか。♪ヤシの実のように...実はアドベンチャーワールドへ納入に行くトラックからこぼれ落ちたもの。でも簡単に孵化できるものなんですかね。ただペンギンの雛は本当に可愛い。

リョウタは意思の強いあばれはっちゃくそのもの。言葉は完全に標準語。無理に変な和歌山訛りを話すより潔いでしょう。ただ撮影が冬だったのでしょうか、南紀白浜なのに風景が暗い。服装も暗い。陰鬱な印象がよくありません。

■チリへの船中のリョウタ

仕掛人はリョウタの祖父。昔世話をした女性が大阪の外国船員バーのママ。チリに行く船に乗せてやってくれと(そんなの簡単にいく訳ないのですが、そこは映画)。また祖父の知人の船員(ケント・デリカット)がなぜか一緒の船に。このケントがいい味を出しています。

すぐ船長たちに見つかりますが、船に乗ってしまえばチリまで行かざるを得ません。船中でリョウタは皿洗いや掃除人夫としてこき使われます。今なら完全に児童虐待。

■チリでのリョウタ

日本大使館では父が待っていました。父もリョウタの意思を尊重して一緒に脱走するも途中で脱落。リョウタ1人で南極へ。ストリートチルドレンに殴られて金を奪われ、ボロボロになってプンタアナレスに到着。そこで奇特な美少女サラに救われる訳です。

チリはスペイン語。リョウタが言えるのは「僕は南極へ行きたい」だけ。後は全て日本語。なんとなく通じるのが嘘くさい。それと服装。南紀白浜では真冬の格好でしたが、チリでは短い半ズボン姿。現地の子は半ズボンなんか履かない?ので結構目立ちます。南米とはいえ南極に近い緯度ですから寒くないのかと...

最後はサラの父親。チリ空軍の将校。サンチャゴへリョウタを強制送還すると偽って南極へ途中下車?するなんて絶対に有り得ないでしょう。でも映画です。夢があってロマンがあって....

台風の翌朝、海岸で大きな卵を拾った。
(食べちゃえば...妹は言ったが)
孵化機の中を卵を見つめるリョウタ。
(養鶏場のお姉さんが反対を押し切って貸してくれた)


ペンタはすくすくと育っていった。
(南紀の海の夕日。ここから南極は遥か彼方...)
ペンタを南極へ返すと決心。南極まで行くの!?
(背中のリュックはUber Eats並み。中にはペンタ)


密航した船の中で船員たちに見つかった。
(そりゃ見つかりますわ...)
サンチャゴの日本大使館では父が待っていた。
父が持参した服に着替える。(そんなのしかないの?)


地元の子に殴られてお金を奪われた。
(連中の前でお金を数えるなんて。愚行の報いかも)
美少女サラに自分の状況を必死で説明する。
(何を描いてるのか不明。脚が寒そう...)


サラの家。まずは風呂に入れと言われて...
私が洗ってあげる! たじろぐリョウタ...
いよいよペンタとの別れが近づいた。
もう僕はお前を助けてやれないんだぞ!



※後記
1991年の少年映画『リトル・シンドバッド』と『ペンタの空』の2本。DVD化もされず、VHSビデオも早々に姿を消しました。バブル最後の年。製作30年を期してHDリマスター版のブルーレイくらい出してもいいのでは。日本人少年の冒険に心が熱くなりますよ。きっと。







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