ごん GON,the LITTLE FOX (2019年)
少年映画評価 |
A(人間の少年ではありませんが。) |
作品総合評価 |
A |
少年の出番 |
90%以上(人間の少年ではありませんが。) |
お薦めポイント |
幼い少年に擬人化された子ギツネのゴン。 |
映画情報など |
2019年公開。有料配信あり。 写真はごん(木彫りのフィギュア)。 |
新美南吉の童話「ごんぎつね」を人形を使ってアニメーション化した28分の作品。各地のプラネタリウムなどで上映されていたそうですが、映画館でも上映され、その場合は『劇場版ごん GON,the LITTLE FOX』と表記されているようです。とにかくよく出来た素晴らしい作品です。
監督の八代健志さんの作品は、本作の他に『眠れない夜の月』『ノーマン・ザ・スノーマン』(2作品)をWOWOWで鑑賞しています。本作は2023年正月に地上波で初めてNHKで放送され、ツイッターでも話題になりました。ゴンの声は人気アニメ「ちいかわ」でも声を担当している田中誠人君。
いたずら子ギツネのごん。その表情はどこか寂しそうで。
病気がちの母と二人暮しの兵十は畑を荒らす動物も撃てない優しい青年。母に食べさせようとウナギを獲るが、子ぎつねのごん(声:田中誠人)がイタズラして逃してしまった。しばらく経ったある日、ごんは兵十の母の葬儀の列を見る。ごんがイタズラしてウナギが食べれなかったから死んだのだ。そんな声が聞こえる。
自分も幼い頃に母狐を亡くした ごんは、兵十の家に栗や松茸、アケビなどをそっと届けます。何回も。不思議に思う兵十。神様の贈り物だろうか。落ち込んでいた兵十はこのままではいけない。立ち直ろう。まずは畑を荒らすキツネ退治だ。そこへごんが。兵十は思わず撃ちます。しかしすぐに悟りました。お前だったのか...
小学校の教科書に載っている有名なお話ですので、ストーリーは皆様もご存知かと思います。テレビシリーズの日本昔ばなしでもありましたし。そんな手垢のついた(すみません)お話をどうしてわざわざ手間のかかる人形アニメにしたのでしょうか。なんて事を見る前は思っていました。
しかし感動しました。今回は何といってもごんの造形。キツネではなく人間の少年として表現されているのです。セリフは多くはありませんが、少年の声で話をするのです。これはあくまでごんの目線でお話が進む時だけ。人間の目線になると、ただの子ギヅネに戻ります。
この手法に違和感を感じる方も多いかもしれません。キツネはキツネのままでいいじゃないか。しかし人間の少年になったとたん、その表情や抱いている思いがストレートに表現されるのです。神様なんているわけない。そうつぶやいた時のごん。ものすごく切なく感じます。
ラストシーン。ごんは撃たれて倒れます。家の中に贈り物をみた兵十は一瞬にして、ごんが持ってきてくれたと悟りますが、もはや手遅れ。お前だったのか。その声にごんはこくりと頷きます。最後の力を振り絞るように。このシーンのごんはキツネの姿。ここは一瞬でもいいので少年の姿になって欲しかった。でもそれを見た子どもたちには刺激が多すぎるかもしれませんけれど。
たった28分の作品なのに、しばらくはかなりクラクラきました。願わくは、少年姿のごんのフィギュアが欲しい。切に欲しい。机の上にちょこんと置いて、いつも見ていたい。ごんが田中誠人君の声で♪ひとりごつを歌い出してくれるような気がして...
兵十が獲ったウナギを見つけた。
ウナギを盗むつもりは無かったのだが...
兵十の目に見えるごんは、ただのキツネ。
(やっぱり少年の姿には敵いません)
兵十の母の葬列をみつめるごん。ウナギを食べれなかったからなのか。
お前のせいだ。お前のせいだ。2匹のトンボがごんを責める。
ごんは栗などを兵十の家に持って行った。
最初は盗んだ魚を持って行くが、魚屋は兵十を殴った。
兵十はお礼にヒガンバナを一輪置いた。
そのヒガンバナを嬉しそうに持つごん。
何回も何回も持っていった。でもこの日が最後。
この直後に悲劇。人形なのに、この切ない顔...
兵十に最後の力を振り絞って頷く。そして絶命。
このシーンが少年の姿だったら。耐えられない...
※後記
八代健志監督の他の作品にも男の子が登場します。『眠れない夜の月』『ノーマン・ザ・スノーマン』なども機会があればご覧になってみて下さい。