雑魚どもよ、大志を抱け! (2023年)

少年映画評価 A-
作品総合評価 B+
少年の出番 100%
お薦めポイント スタンド・バイ・ミーの世界。個性的な少年たち。
映画情報など 2023年国内公開。BD/DVD発売中。
写真は池川侑希弥君。


2022年の東京国際映画祭で上映。興味を持ったのですが、主演がJ事務所(当時)の子と聞いて、また忖度だらけの映画かと思って、2023年春からの劇場公開もパス。ただDVDレンタル開始初日に借りて鑑賞。大反省! なかなかの傑作じゃありませんか。おりしもJ事務所は(会社として)崩壊しましたが、変な先入観を持つことはいけませんでした。

前列左からニシノ、リュウゾウ、シュン、ショウタロウ、トカゲ。後列2人はクラスの悪ガキ。

主人公は小学生のシュン(池川侑希弥)。ヤクザの息子リュウゾウ(田代輝)、発音障害のあるトカゲ(白石葵一)、普通の少年ショウタロウ(松藤史恩)の4人はいつも一緒につるんでいた。目下の関心は町外れにある廃線のトンネル。ここは幽霊が出るという噂だが、トンネルを駆け抜けると夢が叶うとの話もあった。

6年になったシュンは映画好き少年ニシノ(岩田奏)と親しくなった。ニシノの夢は映画監督。しかしニシノは悪ガキにカツアゲされていた。見ぬふりをしたシュンは仲間の信頼を失う。悪ガキのバックには中学生の不良。一人で決闘するというリュウゾウのもとにシュンも駆けつけた。戦いは終った。親友だったリュウゾウは転校する。その日、シュンはトンネルを駆け抜けた...


とにかく本当に『スタンド・バイ・ミー』の世界。こんな事を書くと問題になりますが、女の子がいないのがいい。ストーリー的にはスタンドバイミーよりもずっと面白い。魅力ある個性の少年たちが大勢いて、それぞれ(スピンアウトの)主役作品があってもいいくらい。

まずヤクザの息子リュウゾウ。とにかく演じた田代輝君の存在感がすごい。とても小6には見えないのですが、主役のシュンを守ろうとする思いが伝わってきます。シュンが進学校に行くなら俺も勉強して行く。これはスタンドバイミーのクリスがゴーディに言ったのとほぼ同じ。友情を超えて愛に近いのかも。田代君は『CUBE 一度入ったら、最後』で主役の一人を演じた実力派。

次はゲンタという名前がありながらトカゲと呼ばれている少年。彼の存在感も凄い。緊張すると吃るような話し方。これを演じた白石葵一君の演技力は大したもの。母親が新興宗教の信者。家庭環境は酷いのにきちんと正義感。シュンがイジメを見ぬふりをした事に抗議したが、最後までシュンを信じていた。彼のエピソードももっと見てみたい。

そして主役のシュン。上の二人に比べると普通の少年。それでも母親が難病を抱えるなど苦労を背負う。池川侑希弥君。演技は普通ですが、顔(面構え)がいい。スクリーンに映えるのです。関西Jr.でアイドルを目指しているそうですが、元事務所先輩の岡田准一さんのようないい役者になれる気がします。

もう一人。映画好きのニシノ。一見美少女に見えるロングヘア。学校で映画雑誌スクリーンを読んでいて、シュンが思わず声をかける。ニシノの家は豪邸。シュンは彼の部屋で雑誌やカメラを見て「映画を撮ろう」と約束。しかしイジメに会って転校。ニシノもシュンに淡い初恋のような...「シュンはリュウゾウと仲がいいの?」と聞いた顔がいじらしい。(4人組のショウタロウ君は出番が少なくて残念)

2時間25分という長尺の作品ですが、最後は詰め込み過ぎて消化不良の感じ。シュンがトンネルを駆け抜けて、それからリュウゾウの乗る列車に間に合うのはあまりにもご都合主義かも。『少年時代』や『サバカン』のようなすっきりしたラストにして欲しかった。とはいえ素晴らしい作品でした。


4人の仲間。自転車は少年たちのシンボル。リュウゾウは自転車を買ってもらえないトカゲを後に乗せる。


廃線跡のトンネル。ここを駆け抜けると願いが叶う。リュウゾウは手を合せた。何を願っているのだろうか。
トカゲとシュンの真剣な目つきが印象に残る。


シュンは映画館でニシノと一緒になった。プログラムを真剣にみる。


ニシノが悪ガキたちに呼び出された。シュンとトカゲが後をつけると、カツアゲされていた。
トカゲは先生に言おうというが、シュンはもう少し様子をみようと何もしない。


一時はシュンの不甲斐なさを責めたトカゲだったが、シュンを見直す時がやってきた。


リュウゾウは母の実家である大阪へ行くことになった。シュンともお別れだ。




※後記
残念だったこと。本作は『スタンド・バイ・ミー』のオマージュなので服装もよく似た格好にさせたのでしょうけれど、時代設定は1988年。この時代の小学生男子は一部を除けば8割は半ズボンのはず。体操服も私が知る限りクォーターパンツなんてありませんでした。
演じた少年俳優のかなりが中学生で、声変わりもしていましたので、半ズボンには抵抗があったのでしょうけれど。ここが『サバカン』との感動の差だったりして。まさかJ事務所のドレスコードで反対されたとか...(それはないでしょうけれど疑いたくなって)





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