藍色少年少女 (2016年)

少年映画評価 7点
作品総合評価 5点(最後の40分だけなら9点)
少年の出番 100%(堂々の主役。完全なる少年映画)
お薦めポイント 物語最後の1日。怒涛の展開が素晴らしい
映画情報など 2016年製作。2019年公開。BD/DVD未発売
(写真は堂々主役の遠藤史人君)


前回紹介した「夏少女」は製作後23年経って初公開でしたが、本作も製作からかなり経っての公開です。2016年製作となっていますが撮影は2013年。6年間もお蔵入りだった事になります。

日本では映画、ドラマ、合唱団などタイトルに少年少女とあれば実質は少女メインのケースが多いのでそんなに期待しませんでした。しかし予想を裏切り完全な少年映画だった事は嬉しいのですが..

2時間10分と長尺。最初の1時間半くらいを耐えて、我慢して見ていると最後は思わぬ感動が得られました。何に耐えるかって?・・・・・(耳障りな棒読みセリフ)

チルチルとミチルのように青い鳥を探しに出かけた少年少女
(左がテツオ役の遠藤史人、右がシチカ役の三宅花乃さん)
■ストーリー

テツオ(遠藤史人)は神奈川の藤野(現相模原市)で父と妹と暮す小学生。母は遺影。藤野では毎年福島県の子供たちを招待して夏休みを過ごして貰っている。その中の少女シチカ(三宅花乃)は昨年からテツオと親しくなっていた。最終日の舞台「青い鳥」。主役チルチルとミチルにテツオとシチカが選ばれてしまった。

練習をかねてテツオとシチカは本当に幸せの青い鳥を探して町の人々を訪ね歩く。女性ガラス工芸家(なぜかテツオは母ちゃんと呼ぶ)、自称現代美術作家の男、町の外れの哲学者(ムーミンのスナフキンみたいな男)、孤独な老人など..しかし答えは出ない。そして次第にテツオの心の秘密が見えてくる..

そして運命の1日がやってきた。早朝から飲食店の手伝い、サッカーの試合、幼馴染のヒロキ(大塚宙)を不良グループから抜けさせるための決闘、青い鳥の舞台(これはパスしたけれど)、母の再来と思っていた女性ガラス工芸家との別れ、父と妹と亡き母との絆の再認識..テツオは1日で大きく成長を遂げた...

■はあぁぁ?(不快な言葉)

本作は全編モノクロ。風景や人物のコントラストが強くて雰囲気はいいのです。[モノクロ=往年の名作]の印象が強いだけに、モノクロ映画には演技力のある俳優が不可欠だと思っているのです。

ところがテツオはじめ子役は棒読み。しかも叫ぶような耳障りな喋り方。不快な言葉のオンパレード。一番不快なのが見出しに書いた はあぁぁ?。他人に難くせをつけるようなフレーズが何回も..

考えてみればテツオ役の遠藤史人君は当時10歳。神木君のような天才子役でもなければ仕方のない事です。遠藤君だって表情や仕草などの演技は合格点。問題はセリフだけ。いっそのことモノクロですからサイレントか字幕にすれば名作になったかも。

■詰め込みすぎた最後の1日

ガサツだったテツオの言葉が変りはじめます。それは亡き母のこと。母を交通事故で亡くした当初はうつ病のように引き籠り。それがたまたま町にやってきて事故を起こした女性を母の再来と思って元気を取り戻した。そんな過去が徐々に判ってきました。

しかしその女性に酷い言葉を受けます。もう止めて!私はあんたの母ちゃんなんかじゃないの! その言葉を聞いた時のテツオの痙攣したような顔。これは遠藤君の名演技でした。僕は自分の周りの人がいなくなる事に耐えられないんだ...

本作は福島の被災者に寄り添った話と思っていましたが、そうではなくて一人の少年に寄り添ったテーマなのでした。その意味で福島の少女シチカに対しては掘り下げ不足。もう少し苦悩を描いてあげてもよかったのに。


テツオとシチカと青い鳥を演じる事になった。
(気の乗らないテツオだったが..)
自称現代美術作家の男。怪しい..
しかし心優しい男。テツオたちの味方だった。


テツオと同級生たち。サッカーは補欠だけれど。
(真ん中の子、おちゃらけ子役だった大原和彦君似)
ヒロキを救うため不良に殴られたテツオ
(暴力シーンは控え目なのが救い..)


テツオとシチカ。2人の絆は深まった。
シチカの短パンが眩しい。テツオはカーゴパンツ
(カーゴパンツは個人的に嫌いです..)
メイキングより。2014年の試写会で挨拶。
この時は2015年全国公開とのテロップが。
(結局2019年までお蔵入りに)


※後記
本文で言及しませんでしたが、テツオの妹フミコがいい味を出していました。福島のレン君を家に連れてきて「私たち結婚します」と父に宣言。レン君もフミコもめちゃくちゃ可愛かった。もう1人テツオの同級生ヒロキ。不良に万引きを強制された現場を咎めたテツオに放った言葉。これも心に残りました。






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