白鳥が笑う (2015年)

少年映画評価 5点
作品総合評価 5点
少年の出番 90%(実質主役)
お薦めポイント 北海道苫小牧の美しい風景と少年たち
映画情報など 2015年公開。未メディア化。京都国際映画祭で配信
(写真は菅原麗央君)


2019年の映画『僕はイエス様が嫌い』で海外で多数の新人賞を受賞した奥山大史監督が、まだ19歳の時に監督した20分の短編映画。2015年の第7回沖縄国際映画祭で初上映。そして2020年京都国際映画祭で配信され、鑑賞する事ができました。

白鳥係の3人と白鳥おじさん。(しょうちゃんは長髪。あとの二人は丸刈り。なぜか女子はいない...)
■ストーリー

苫小牧の小学生、しょうちゃん(菅原麗央)は父子家庭。母は父の暴力に耐えかねて家を出て行った。学校では白鳥係だった。白鳥がやってくるのを毎日観察している。そこには白鳥おじさん(原西孝幸)と呼んでいる変なオジさんがいて、いつも大きな声で白鳥を呼んでいる。

ある日、おじさんの掘立小屋に入ったしょうちゃんは、おじさんの娘の写真を見つけた。驚いたのは、その娘は知っている人だった。苫小牧のお祭りの日。白鳥のゆるキャラに扮していたおじさんをしょうちゃんは突き飛ばした。学校の担任の女先生の目の前で..

■父親は遠きに在て想うもの...

また父親の暴力。映画やドラマ、海外作品でもお決まりのように。母子が経済的に自立できるならば、父親なんて百害あって一利なしの時代でしょうか。男として寂しいですけれど。もちろん父親は不可欠な存在です。でも身近にいる必要はないのかも(その昔「亭主元気で留守がいい」なんてCMが流行りました)

白鳥おじさんは何かの事情で妻子と別れたものの、娘への愛情は捨てきれずにいます。遠くからでもいいので娘を見たい。ゆるキャラの着ぐるみの隙間から娘を...その時、少年に突き飛ばされ「何をするの!」と走り寄った先生が娘でした。着ぐるみ越しに娘と抱き合って涙を流すおじさん。

これは少年が仕組んだ事だったのでした。自分も母親がいないという寂しさがあり、おじさんの気持ちが判ったのでしょう。でも彼が家庭に戻って父親をやり直せるでしょうか。きっとまた些細な事で腹を立て、暴力が繰り返される...そんな未来しか見えなくて。

主演の菅原麗央君。昭和の名子役の一人である高野浩幸さんによく似ています。本作の後、2016年の映画『レミングスの夏』でも重要な役を演じていました。さて当時19歳の奥山監督ですが、この時から既に少年俳優を撮るのが非常に上手い。今後どんな作品を作ってくれるのか本当に楽しみです。

父の暴力に耐えかねて母が出ていった。
しょうちゃんは何も出来ず見送るだけ...
それでも学校では明るくふるまっていた。
母ちゃん戻った?と聞く友だちを追いかけ回す...


白鳥おじさんの小屋の戸が開いていた。
(こんな掘立小屋で冬を越せるの?)
小屋の中には娘の写真がいっぱい貼ってあった。
子供時代から大人まで。あっ!これは先生だ...


お祭りの日。白鳥おじさんを突き飛ばした。
何するの!と先生に叱られても...
しょうちゃんの頭の中は、母との別れの日
(母のぬくもりを思い出して...)



※後記
着ぐるみを着て誰かに会いに行く...これは関西の超人気番組「探偵ナイトスクープ」の定番。やはり制作が吉本興業ならではの発想かもしれません。ちなみに白鳥おじさんも吉本興業所属の漫才師である原西孝幸さん。





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