キリノシロ (2020年)

少年映画評価 B+
作品総合評価 B+
少年の出番 ほぼ100%(主役は少女ですが)
お薦めポイント 最後までクソガキ。でもふっとみせる寂しげな表情。
映画情報など 2020年、公開。GYAOで有料配信中。
写真は生駒星汰君。


群馬県中之条町で開催された伊参スタジオ映画祭シナリオ大賞2019(中編の部)で大賞受賞。翌2020年に映画化。主人公は田中千空さん演じる少女ですので、最初は第5部にしようかと思ったのですが、生駒星汰君演じる少年もダブル主役といっていいほどの熱演でしたので、ここ第3部にしました。

家に帰りたくない。コウヤは河原で石を投げ、水に入っていった。
この直後に真魚と出くわした。ずぶ濡れのままキリノシロへ行く事に。

母子家庭の小学生 真魚(田中千空)は母と祖母の家へやって来た。祖母はラブホテル「キリノシロ」を経営している。その事で同級生から囃し立てられた。その急先鋒がコウヤ(生駒星汰)だった。コウヤは何かにつけて真魚に絡んでくる。コウヤは父子家庭で父親から暴力を受けているようだったが、先生にもその事は言わない。

ある日、真魚と道で出会ったコウヤは、キリノシロへ行こうと無理やり押しかける。そこへ客が来て2人はクローゼットへ隠れた。担任の先生の奥さんが不倫していたのだ。何とか逃げ出したが、コウヤは発熱で倒れる。医者に運ばれて身体中の傷を見られてしまい、児童相談所へ送られる事になった。コウヤは転校していく。


中編といっても30数分。この短い時間に2人の少年少女の甘酸っぱい関係をしっかり凝縮。近頃の小学生ならラブホテルが何をする所かくらいは知っているでしょう。それでもコウヤは家に帰りたくない。ホテルに泊めて。なんて言い出します。父の暴力が怖かったのでしょう。

しかしコウヤは人に弱みを見せるのが嫌な性格。辛い時なのに、わざとふざけて笑ってしまう。本当は好きなのに同級生の真魚に意地悪をしてしまう。クソガキです。でも時折ふっと寂しそうな表情を見せる。これは『望郷 Homesick』の生駒星汰君の演技と同じ。たまらなくいい表情をします。

一方の少女真魚。転校した学校でなかなか友人も出来ず、ラブホテルには負い目もあるのかもしれません。前の学校の親友たちが「休みにみんなでホテルに泊まりに行くよ」なんて手紙も来ます。まさかラブホテルに小学生女子が大挙して宿泊する訳にはいきませんし。ずっと少女は受けの演技。でもこれが昭和の女の子のようで非常に好感が持てました。

ラスト。転校していくコウヤ。本当は真魚にも優しい言葉をかけたいに違いありません。背中がそう語っています。でも最後まで憎まれ口のクソガキを貫きます。それでも最後に振り返った表情は愛?に満ち溢れていました。女性監督さん。本当に素晴らしい演出です。

担任の奥さんが愛妻弁当を届けに。冷やかすコウヤ。
(この奥さんとは意外な場所で対面する事に)
授業も聞かず、消しゴムを鼻くそのように丸めては
同級生の真魚に投げ込む。クソガキですなぁ...


校外での写生授業。やっぱり絵はそっちのけで
友だちの邪魔をするコウヤ。さすがに先生は注意。
その時、Tシャツがはだけた。肩にはアザが...
コケたんです。先生には弱みをみせたくない。


嫌がる真魚を連れて無理やりキリノシロへ。
部屋が1つ開いていて、そこへ入り込む。
そこへお客が。慌ててクローゼットに隠れる2人。
客の1人は担任の奥さんだった。まさか不倫とは。


不倫をみてショックの真魚。先生に言おうかしら。やめとけよ。先生の弱みを握っておこう。どこまでもクソガキ。
しかしこの直後、コウヤは熱を出して倒れる。濡れたままでいたせい。そして病院で虐待痕がみつかった。

児童相談所の裁定でコウヤは転校。真魚のお別れの言葉を全く無視。最後までクソガキか...
と思ったら。振り向いて笑顔をみせる。真魚が大好きだった。素直に言えばいいのに。


※後記
虐待の跡がある少年。これをみると仏映画『トリュフォーの思春期』を思い出しました。少年は健康診断を拒みますが、無理やり服を脱がされて身体検査。そこで傷跡が見つかるのです。





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