十年 Ten Years Japan(2018年)

作品総合評価 6点
少年の出番 20%(短編5作のうち1作で主役)
寸評 10年後への警鐘を描いた5短編。監修は是枝裕和氏。
【少年映画でない理由】出番と印象が少ない。
映画情報など 2018年製作。DVD発売中。
(写真は「いたずら同盟」の大川星哉君)


2015年の香港映画「十年」は10年後の香港を5本の短編で描いた作品。そのパターンを踏襲して日本、タイ、台湾でも同じ趣旨の作品が製作。日本版は是枝裕和氏が総合監修として若手5人の監督による各20分の短編で構成されています。

リベラル(左派)の是枝氏ですから現政権に批判的な内容である事は確か。そのためヘイトまがいの酷評レビューも散見。5つのテーマが提起されていますが、私はテーマごとに是々非々の立場です。

固い話になってしまいましたが、私のホンネは別。少年主役の1編があること。「泣き虫しょったんの奇跡」に登場した大川星哉君。またなんとスタダのEDAMAME BEANSの中野龍君まで。幸いな事にWOWOWで放送されましたので録画して鑑賞しました。

学校で飼っている馬が殺処分されるという話を聞いてしまったリョウタ
■ストーリー

(1話)PLAN75。75歳以上の高齢者の安楽死が認められた社会。様々な安楽死サービス?が...
(3話)DATA。故人の個人情報をデジタル化して保管。母の秘密を知った少女、その取り扱いは...
(4話)その空気は見えない。放射能汚染により地下で生活する社会。見た事がない地上を目指した少女たち...
(5話)美しい国。国を守るために徴兵制が復活。そのポスターのデザイナーの父はかつての戦争で...

(2話)いたずら同盟(これが今回のお目当て)
小学校の生徒たちは頭にコントローラーを装着しAIによる最適な授業。コントローラーは反抗的な生徒には身体的な罰も与える。落ちこぼれ少年リョウタ(大川星哉)は学校で飼育している馬が殺処分されると聞いて、友人(中野龍)らと馬を逃してやった。たまたま停電でコントローラが止まっていたのだ。

馬は逃げて森の中へ。リョウタたちも追いかける。しかし既に病気になっていた馬は死んでいた。それでも自由になれて馬は幸せそうだった。リョウタたちも光に向かって駆け出した...

■テーマの是々非々について

1話のPLAN75。高齢者の増加が財政を圧迫しているのは明白な事実。そこで75歳以上の高齢者には、原則として延命治療は行わない。安楽死も認める。安楽死は本人の意思が基本。但し認知症等で意思が表示できない場合は家族や医師の判断で可能(ここが怖いところ)

本作品ではこれらをとんでもない制度と主張しているようです。でも私は少し違います。遺産問題とか偽装殺人などの懸念はありますが、安楽死は人間の尊厳として認めてもいいのではないでしょうか。

3話のDATA。私も皆様もいつかは死にます。作家、芸術家、政治家、スポーツなど後世に生きた印を残せた人はいいですけれど。自分の思いや収集してきたものをデジタルとして保管するのはいいのでは。恥ずかしい部分も含めて。(そんなもの誰が読むんだ?と言われたら返す言葉もありませんけれど)

4話のその空気は見えない。これは原発への批判。福島と違って西日本の原発であれば汚染は風に乗って日本列島全体に拡がると言われています。本作品のような地下生活も有り得る事態。今の原発(核分裂)ではなく、核融合の技術が確立されればいいのですけれど...

5話の美しい国。日本は戦争をしない国だったはず。それが原則。とはいえ防衛力は必要と考えます。しかし戦車、戦闘機、空母なんかは第2次大戦の遺物。ましてや徴兵制なんて。ロボット、AI、サイバー、宇宙、バイオの時代。ウルトラマンに出てくる科学特捜隊みたいなのが必要な時代では。

■AIによる教育

さて2話のいたずら同盟。小学生の頭に装具を装着。何をセンシングしているのでしょう。反抗的な生徒には強烈なノイズを放射して痛めつけます。まあSF映画によく出てくるアイテムで珍しくはありません。

教科の学習だけに限れば、AIは効率的で反対はしません。しかし人間として悩み、喜び、悲しみ、そして成長していくプロセスまでAIで養成するのでしょうか。これは(まるでロボトミー手術のように)時の政権に従順な人間を作り出すのが目的なんでしょうか。それは怖いことだと思います。

と、ここまで固い事ばかり書いてきました。主役の大川星哉君。泣き虫しょったんでは大人しくて存在感の薄い子と思ったのですが、本作では正反対。なかなか演技力がある子役さんです。エダマメの中野龍君も、youtube(EDAMAME TV)でみせる表情とは全く違う真剣さ。将来は俳優さんかもしれません。

AIによる小学校の授業風景
(教室は前世紀なみにババっちいなあ...)
落ちこぼれ少年リョウタは馬が好きだった
(AIの時代でも小学校に馬小屋があるんですねぇ..)


野球少年。最初はリョウタとはソリが合わなかった。
(中野龍君。結構キマっていました。)
馬を逃した。しかし馬は森で死んでいた。
(馬の死体をみてたたずむ3人の少年少女)


ラストシーン。3人は朝の光の中へ駆けていく。
(洋画の1シーンのようで綺麗です。彼らの前途に希望はあるのか..)

※後記
2話で小学生が頭に装着している装置。あのオウムで修行している人がつけていたヘッドギアを思い出して...あまりいい気分がしません。もう25年以上前のこと。知らない人も増えていますけれど。
もう1つ。中野龍君はTV東京の「さすらい温泉」8話に主役級で出演。卓球少年の役でした。今ネットで検索すると、この8話だけは再放送しないとか...(真偽不明)。





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