MOTHER マザー (2020年)

作品総合評価
少年の出番 40%(前半約50分は準主役)
寸評 実話とはいえ、あまりに救いの無い物語。
【少年映画でない理由】テーマは母親。
映画情報など 2020年、公開。BD/DVD発売中。
写真は郡司翔君。


17歳の少年が祖父母を殺害した実話に基づいた作品。2020年の日本アカデミー賞で長澤まさみさんが最優秀主演女優賞、17歳の息子役の奥平大兼さんが新人俳優賞を受賞するなど、非常に評価の高い作品です。しかし17歳とはいえ少年による殺人というテーマは、私には受け入れられませんでした。

しかし映画のスチール写真で、息子が8歳くらいの頃を演じた郡司翔君の目をみてちょっと衝撃。こんな幼い子なのに何の希望も宿っていない目。ちょうどWOWOWで放送がありましたので鑑賞しました。でも2回見たいとは思いません。

母は川田という男と出かけたまま帰って来ない。誰もいない部屋で...

シュウヘイ(郡司翔)の両親は離婚、母(長澤まさみ)と2人暮し。父から貰う月5万円の生活費は母が全てパチンコなどで浪費し、借金だらけ。シュウヘイは学校にも行かなくなった。母は川田(阿部サダヲ)という男と関係を持ち、3人で転々と生活を始める。シュウヘイはネグレクトや虐待を受けるが、2人と一緒にいるしかない。

川田は母を捨てるが、母は次々と男を変える。川田が戻ってきて母は妊娠。女の子を産んだ。17歳になったシュウヘイ(奥平大兼)は妹の世話をしながら日雇いのような仕事。とても生活できない。母は命じた。祖父母を殺して金を奪って来い。シュウヘイは逆らえない。逮捕されて懲役12年。母は執行猶予。しかし母に反省の色は皆無...


まあ本当に救いの無い話。しかし実際の事件をネットで読むと、映画はほぼ忠実に再現されています。刑に服す息子が「母親が好きだから」と言うのも同じ。母への愛なのか、それとも洗脳されて支配されていたのか。息子が哀れで。母親は無期懲役でもいいのでは。そしてクソ男たちには...

思い出すのが映画『誰も知らない』。この作品も愚かな母親が登場しますが、底には暖かいものが流れていました。何回でもリピートして鑑賞したくなる何かがありました。しかし本作は、時おり優しさも見え隠れしますが、本流は冷たい悪意が支配しているようで。

母と川田は何週間か外泊。放置されたシュウヘイ。ガスを止められて湯も沸かせず、カップ麺をガリガリと齧るだけ。それでも戻ってきた2人に文句一つ言いません。そして借金の無心。叔母や祖父母の家へ一人で。悲惨な姿の8歳の少年がドアの前に立っても、叔母や祖父母は激しい罵倒を浴びせるだけ。

嫌だったでしょう。辛かったでしょう。思いっきり泣けばいいのに。しかしシュウヘイは感情を表に出さず、思い詰めたような表情で耐えています。それが切なくて。そんな思いをさせる母親に腹が立って。欧米の方が、こんな日本人少年をみたらどう思うのでしょうか。自己主張こそ正義とする欧米少年少女たちと比べたら...

こんな役を演じきった郡司翔君にも、何か賞とまでは言いませんが、もっと評価があってもいいのではと思います。なお17歳以降を演じた奥平大兼さんは、新人賞受賞に値する素晴らしい演技でした。


学校から帰る道。母が迎えに来てくれた。
この頃はまだ学校にも通っていた。
川田という男が家に住み着くようになった。
2人分のカップ麺。自分の分は無い。


ガスを止められ、カップ麺をそのまま齧る。
母と川田は2週間たっても帰って来ない。
やっと帰ってきた。川田は腰を揉めと。
こんな小さな子に按摩させて...実の子でもないのに


叔母の家。「お母さんがお金貸してって...」
叔母は罵声を浴びせる。こんな哀れな子に...
川田が母を殴る。母の身体を庇うシュウヘイ。
さすがの川田も、これ以上の暴行は止めた。




※後記
母と川田が同棲する部屋で暮すシュウヘイ。川田は腰をシュウヘイにマッサージさせるなど、やりたい放題。しかし実際の事件のルポを読むともっと陰惨な事も。退屈を持て余した男は、少年に自分の股間をフェ○○オまでさせたとか。ああ嫌だ、嫌だ...





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