とんび (2022年)

作品総合評価
少年の出番 数分(白鳥晴都君のみ。他に幼児・子ども時代もあり)
寸評 定番の重松清作品。いいものはいい。
【少年映画でない理由】出番過少。
映画情報など 2022年公開。BD/DVD発売中。
写真は白鳥晴都君。


重松清氏の小説はどれもハズレがありません。本作は2012年NHK、2013年TBS日曜劇場、と立て続けにドラマ化。本作は2時間20分の長尺とはいえ、ダイジェストを見ている感じもしましたが、いいものはいい。ただ白鳥晴都君演じる少年時代をもう少し見たかった。

母さんはなぜ死んだの? 意を決してアキラは父に尋ねた。

広島県の港町で働くヤス(阿部寛)に息子が生まれアキラと名付けた。アキラが3歳の時、母が事故死。以来ヤスは男手ひとつでアキラを育てる。12歳になったアキラ(白鳥晴都)は母がなぜ死んだのかヤスに尋ねる。お前の母は俺を助けようとして死んだんだ。ヤスは打ち明ける。これは嘘だった。

中学生になったアキラ(北村匠海)は野球部に。反抗する事も増えたが父子の絆はゆるがない。やがてアキラは東京の大学へ行き、東京の出版社へ就職。そして年上のバツイチ女性(杏)を連れて故郷へ戻ってきた。結婚します。ヤスは認めたくなかったが息子の決断を許した。年月が経ちヤスも他界。アキラは直木賞作家として成功。そして。


いきなりネタバレ。幼いアキラが父の職場でタオルを振り回していると、タオルが高く積んだ荷物に引っかかり荷崩れ。母がとっさにアキラをかばって下敷きに。アキラのために母は死んだわけです。でも父のヤスはそれを絶対に言わなかった。

そのため思春期のアキラは親子喧嘩で、母さんじゃなく父さんが死ねばよかったんだ!と暴言。それでもヤスは何も言いません。このまま一生知らせないつもりだったんでしょう。でもずっと親戚同様だったお寺の和尚がアキラに真相を話しました。お前は事実を知って生きていかなければならない。

アキラも事実を知った事をヤスには言いません。でも就職採用試験の作文には「父への感謝」として事故の内容を書きます。その作文をなんとヤスが読んでしまうという事態に。ここは出来過ぎですが、親子の愛に泣けるところです。

こんな風に家族はいなくても、お寺の住職一家、居酒屋の女将さん、友人たちなど大勢の人たちによって、ヤスとアキラは育てられていく。こういう関係は地方独特のものかもしれません。あまりにお節介だと息が詰まりますが、いい距離感で近所付き合いをしていく事がポイントでしょう。

さて白鳥晴都君。先に彼の主演映画『ぜんぶ、ボクのせい』を見て、それで本作も見たくなった訳です。本作では5歳役の森優理斗君の方が目立っていたかも。でも美少年ぶりは大したもの。お風呂のシーンが数カット。あまりに真白な肌に違和感。父役の阿部寛さんは真っ黒に日焼けしている事もあって。

中学生から老人までを演じた北村匠海さん。中学生役は違和感なかったのですが、中年男以降は違和感大あり。もう少し特殊メイクの技術を上げて欲しいところ。別の役者さんが演じた方が良かったかもしれません。

母のお葬式。幼いアキラを抱きしめるヤス。
3歳のアキラを演じたのは小川和真君。
少し大きくなったアキラ。
5歳のアキラを演じたのは森優理斗君。


小学6年生になったアキラ。
12歳のアキラを演じたのは白鳥晴都君。
太陽の塔と万博記念メダル。この時代、
小学生はほぼ全員短い半ズボンのはずなのに...


銭湯。この時代、内風呂はまだ少なかった。
この日、アキラは父に聞きたい事があった。
左は少しだけ見せたアキラの肌、真っ白じゃない...
(昭和少年はもっと日焼けしてないと...)


小学校の卒業式なのに制服がダブダブに見えて。
70年代。私服でなく制服でこんな長いズボン無かった...
父がアキラを抱き上げる。満面の笑み。
笑うと本当に幼く見えて可愛い。



※後記
タイトルのとんび。「とんびがタカを生む」の諺が出典でしょう。平凡な親から優秀な子が生まれる。本作の親であるヤスは決して平凡では無かった。アキラは「此の親にしてこの子あり」だったと思います。

本作品のアキラは重松清さん自身と重なるようです。瀬戸内地方から上京して早稲田大学。そして出版社へ就職。重松さんのお父様はヤスのような破天荒で情愛に溢れた方だったのでしょうか。マンネリでも構いませんので、またこのようなストーリーの作品を見たいと切望しています。





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