ぜんぶ、ボクのせい (2022年)

少年映画評価
作品総合評価 B+
少年の出番 ほぼ100%
お薦めポイント とにかく主演少年の表情と声。これだけで2時間OK。
映画情報など 2022年国内公開。BD/DVD未定。
(写真は白鳥晴都君。)


大阪のテアトル梅田で鑑賞。少年主役作品なので観客は少ないだろうと思っていたのですが、意外にも結構入っていました。とはいえコロナ禍が続きますので、席数の半分には遠く及びませんけれど。

あえて事前学習をしないで鑑賞したのですが、上映時間は2時間もあります。普通のお客さんは途中で飽きて寝てしまうかもしれません。でも近年ここまで少年俳優をクローズアップした作品は少ないので、白鳥晴都君を見ているだけで私は大満足でした。

施設を抜け出して母の家へ行ったが、そこも追い出され、たどりついたのは千葉の海岸。これからどうしよう...

13歳のユウタ(白鳥晴都)は5歳から施設暮し。母はもう数年以上面会に来ない。職員のファイルで母の住所を知ったユウタは施設を脱走して母の家へ行く。母は喜んでくれたが愛人がいた。結局はユウタを施設に戻そうとする。ユウタはあてもなく逃げて海へ。そこでホームレスの男(オダギリジョー)と出会い、男の軽トラで同居を始める。

軽トラは故障中。男とユウタは廃品を盗んでは売りに行く生活。地元の女子高生(川島鈴遥)も男の知り合い。彼女の家は裕福なのに満たされぬものがあり不良行為もしていた。3人の間に不思議な絆が生まれるが、やがて悲劇。地元のチンピラが軽トラに放火。男は焼死。ユウタは放火の嫌疑で捕まった。


傷だけらけのユウトが警察に尋問されるシーンから映画が始まりました。これはラストシーン。この手法は是枝裕和監督の『誰も知らない』と同じ。その他、全体的にこの映画に似た雰囲気があります。主演の白鳥晴都君は、「誰も知らない」の柳楽優弥さんと同じ事務所の後輩ですし。

また同じ是枝監督の『万引き家族』とも雰囲気が似ています。やはり同じ事務所の先輩である城桧吏君が出演していました。ただ本作のボリュウムであれば2時間は長過ぎるように思います。90分以内に絞らないと冗長な部分が目立って。

それでもとにかく白鳥晴都君が良かった。これに尽きます。憂いを含んだ眼差しの完璧な美少年。ボソボソっと話す声は完全なボーイソプラノ。オダギリジョーさん演じるおっちゃんと狭い軽トラの荷台で一緒に寝ていて、変な関係になりはしないかと気掛かりでした。(なんにもありませんでしたけれど)

ただ演技については、ちょっとぎこちないい感じもありました。シリアスなシーンで照れたような薄笑いを浮かべているのも気になりました。これは台本通りなのでしょうけれど、ちょっと違和感も。

本作では、名古屋を中心とした東海地区に大地震が起きた設定になっています。ホームレスの男は幼い頃、母親に虐待を受けて今でも憎んでいる設定。その母が暮す名古屋へ行く途中で軽トラが故障。早くエンジンを直して名古屋へ行こう。それが男の口癖でした。

いつの間にかユウタも一緒に名古屋へ行く気分。女子高生も一緒。この変な3人組のロードムービーが見たかったのに...結局1cmも動かず。放火殺人をしたクズ人間たちもお咎めなし。最後がいけません。夢が一つもない...

主役ユウタを演じた白鳥晴都君。
終始うつむいて、ボソッと喋る。でも何か魅力的...
災害とか・・・世の中で起きている悪いこと。
ぜんぶ、ボクのせいなんです。警察官に言った。


ホームレスのおっちゃんに拾われて、擬似父子のようになった二人。束の間の幸せ...

孤独な女子高生も加わった。3人とも「母親への思い」をかかえている。3人で名古屋へ行こう...(果たせなかった)



※後記
オダギリジョーさん演じる男はチンピラに放火されて車ごと焼死する訳ですが、その前から血を吐いて重病であったようです。それでも逃げもせず、もういいかと死んでしまった....血を吐いてもずっとタバコを吸い続けている。ちょっと鬼気迫る演技がずっと残っています。

本作では父親の存在感が薄いのですが、ユウトがおっちゃんの背中をみて「お父さん、お父さん」とつぶやくシーンがありました。彼には父の写真もなく、父親というものがどんなものか想像できないのですが、おっちゃんをみて、ふと思ったのでしょう。あざといけれど、ちょっとホロっとしました。

もう一つ。本作の主題歌は♪夢で会えたら。これは知っていましたが、誰かがカバーしているのだろうと思っていたら、故・大瀧詠一さんが歌っていました。この歌にも感動しました。





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