黒執事 地に燃えるリコリス (2014年)

上演年・場所 2014年・彩の国さいたま芸術劇場他
舞台評価 A-
お薦めポイント 日本でも、少年俳優が堂々の準主役
関連情報など DVD発売中。
(写真は福崎那由他君)


2014年の映画『もういちど』で、私的には大ブレイクしたと思う少年俳優、福崎那由他君が出演したミュージカル舞台。原作マンガも全く知らず、どんな役かも知りませんでしたが、ネットでも福崎君の評判はそこそこいいので、DVDを購入しました。

舞台作品では、これまで「作者をせかす六人の主人公たち」や「ヘンリー4世」を取り上げていますが、少年俳優の出番はごく僅かですので、本作品も全く期待していなかったのですが、本当に驚きました!ほぼ主役で、最初から最後まで出ずっぱり、おまけに歌もたくさん歌ってくれます。日本でこれほど少年俳優が前面に出たミュージカルがあったでしょうか。

執事セバスチャンと少年シエル

舞台はイギリス、ある貴族の少年シエル・ファントムハイヴ(福崎那由他)は両親を殺され、自身も幽閉されるが、悪魔セバスチャン(松下優也)と契約して逃れ、それ以降セバスチャンは執事としてシエルに仕える身になった。(よく判りませんが、シエルが死んだ時、魂はセバスチャンのものになるのでしょうか)

シエルは特殊な推理能力を持つ少年貴族として英国女王から信任されている。その頃、ロンドンで娼婦が残忍な方法で殺害される「切り裂きジャック」連続殺人事件が発生。シエルは英国女王からの命を受けて秘密捜査に乗り出す。

セバスチャンの活躍で犯人の目星をつけ、シエルは女装して犯人の館に乗り込み、犯人を捕まえた。しかしそれ以降も殺人事件は続く。やがてシエルの唯一の親族で、シエルを可愛がってくれる叔母のマダム・レッド(AKANE LIV)とその執事の行動が怪しいことを、セバスチャンはつきとめた。そしていよいよ対決の時がやってきた。マダム・レッドの生い立ちとは。

 肩のこらない、楽しいミュージカル

シェークスピアや国立劇場などで上演される重厚な舞台ではなく、原作がマンガだけに、ライトでコメディータッチの舞台。出ている俳優さんも大半が20歳代の若手ばかり。吉本新喜劇のようなコントもあります。だからといって、バカにしてはいけません!本当に楽しくて素晴らしいで舞台した

特に素晴らしかったのが、主役セバスチャンを演じた松下優也さんと、マダム・レッドを演じたAKANE LIVさん。このお二人の熱演で、舞台が芸術的なものに高まったように思います。

3時間近くある本編DVDですが、正直に言えば、適当に早送りして鑑賞しようと思っていましたが、「えっ今のナニ?」なんて、逆戻しで確認するなど、4時間近くかけて鑑賞しましたが、時間の長さなんか感じませんでした。いやいや、ご年配の皆様も喰わず嫌いせず、是非一度見て下さい。

 福崎那由他君、もう切なくて

でも、やっぱり、なんてったって福崎那由他君。原作は少女マンガなのでしょうか、BL(少年愛?)っぽい設定ですので、初めから終わりまで、彼の演技を見ることができ、最後は、なぜか切なくなってしまいました。

福崎那由他君。この衣装がいいですねえ

舞台のシエルは終始、命令口調で、冷たく、生意気な少年です。本来の那由他君は、もう少し気弱で大人しそうな少年に思いますので、そのギャップは大きいのですが、必死で頑張っているように見えました。その様子が健気で、健気で・・

映画「もういちど」では落語を一席、演じ切りましたが、今回は3時間近い舞台を全公演34回も。DVDは本当の千秋楽でしたので、もう十分慣れていたと思いますが、それでも緊張感はタダモノではなかったと思います。殆どノーミスで完璧でした。

歌もたくさんあり、少し低めのボーイアルトですが、張りのある声でした。特に最後のシーンでは、歌唱力絶大のAKANE LIVさんが歌っていた曲を、那由他君が歌います。当然、彼女には勝てませんが、それでも精一杯な声に、涙が出そうになりました。

千秋楽最後のカーテンコール。時間が伸びて午後9時を過ぎて中学生は出演NGとの事で、本来なら最後から2番目(大トリ前) のところ、順番を早めて挨拶。何回か泣きそうな表情になりましたが、ここはなんとか堪え、引きつった笑顔で、一人先に退場。ああこれで、もう声変わり前の少年俳優、福崎那由他君を見るのは終わりか。なぜか切なくて切なくて。

本編DVDはここで終了ですが、メイキングを見ると、退場後の那由他君はこらえ切れず泣いていました。戻ってきた俳優やスタッフに「なゆた、泣いてる」と言われ、抱かれていたのが印象に残ります。これだけで、那由他君がスタッフや俳優さんに愛されていたのが、よく判ります。いい作品や人間にめぐり会えた少年俳優は幸せですね。

2015年も同じシエル役で続投していますが、1年経過してしまえば、2014年のシエルとは別のシエルになっているのでしょうね。成長は喜ばしいことですが、寂しくもあるのが、少年映画・舞台ファンの宿命かな。

悪魔セバスチャンと契約してしまった
ロンドン下町の少年に変装して捜査


女装して犯人を誘惑しろと悪魔に言われ
カーテンコールでは、何とか涙を堪えました
(しかし、この後、楽屋裏では涙、涙)

 以下は、特典DVDのメイキングから

舞台稽古の頃の那由他君は、もう少し声が高く、まだボーイソプラノでした(舞台本番ではボーイアルト)。また、どうやら福崎那由他君の「影武者」として小柄な女性の役者さんもいるようです。スタントなのか、あるいは万一那由他君が出れない状況になった時の代役も兼ねていたのかも。

ネットで「黒執事」の感想などを読んでみましたが、シエル役の福崎君については、もちろん評価する意見が多いのですが、辛口のコメントも結構見つかります。

その中で、ちょっとショックだったのが、過去4人のシエル役の中で一番華が無い、美形さに欠けるなど。私は過去3代の方を見ていませんので、反論は出来ないのですが、ちょっと悲しい気分です。確かに本篇のシエル役よりも、メイキングの中で見せる素のままの福崎君の方がずっと魅力的なのですが。

練習最初の挨拶。まだ幼い感じです。

千秋楽。21時を過ぎて先に退場し、舞台の袖で出演者を待つ福崎那由他君
(一見笑顔ですが、既に目尻と鼻の先に光るものが出ています)

大人の役者さんに甘える?のは上手。この笑顔にお兄さん方も・・

この笑顔が本当の姿(舞台では笑顔は封印)
柔軟体操で鍛えられ
(背中から見える白いのは何)





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