主人公は11歳の少年、聡(村田将平君)。東京で父子2人で暮らしていたが、父が事故で急死し、福岡県の田舎の祖父母に引き取られる。しかし精神的ショックで口がきけなくなってしまう。地元の悪ガキにいじめられたり、の定番展開の中で、地元に伝わる「千年火」を守る老人とその孫娘との交流を通して、次第に自分を取り戻していく
少年映画評価 | 9点 |
作品総合評価 | 6点 |
少年の出番 | 100%(主役) |
お薦めポイント | 遠泳に挑む村田将平君 |
映画情報など | 2003年製作/DVD発売済 |
今から思えば、2004年前後は、日本の少年映画のピークの年だったのかもしれません。本作品「千年火」もその作品の一つでした。タイトルも素晴らしいじゃありませんか。
■ストーリー主人公は11歳の少年、聡(村田将平君)。東京で父子2人で暮らしていたが、父が事故で急死し、福岡県の田舎の祖父母に引き取られる。しかし精神的ショックで口がきけなくなってしまう。地元の悪ガキにいじめられたり、の定番展開の中で、地元に伝わる「千年火」を守る老人とその孫娘との交流を通して、次第に自分を取り戻していく
東京で事件や不幸があり、田舎の祖父母に引き取られた少年の物語。地方映画や児童映画の本当にワンパターン展開。こんなありがちなストーリーを、引き締めたのは主役の村田将平君の魅力です。どことなく憂いを帯びた表情で、しゃべることができない少年を見事に演じています。
村田君は、何というのでしょう、言葉で言い表せない「雰囲気」を持った子役で、なかなかこんな子はいないように思います。凡作「ベースボールキッズ」や「レイクサイドマーダーケース」にも端役で、少し性格の悪い少年役で出ていましたが、それでも他の子役よりオーラがありました。
しゃべれない少年役で、キーとなるアイテムが携帯電話です。地元の女の子との会話は、携帯電話で文字を打ってみせたり、地元の子に「携帯もつなんて生意気だ」とイジメられ、海へ捨てられてしまったり、と携帯電話がアクセントになっているのです。
しかもそれが、そのままで終わらず最後の場面で、亡くなった父親とのコミュニケーションの伏線にもなっています。※脱線ですが、男の子のくせに赤色の携帯電話を持っているなんて、と思いながら観ておりましたが、何ヶ月か後、自分の携帯の機種交換時に、赤色にしようか、と思ったりしてしまいました。(結局は赤にはしませんでしたが)
■くせもの共演俳優父親役は鶴見慎吾氏で、この人はクセや嫌味が全くないサラっと系の方ですが、千年火を守る老人役の丹波哲郎氏は、どこか「いかがわしさ」を持つ方です。それが今回は作品の奥行感になり、効果的だったかもしれません。
チョイ役ですが、ばってん荒川さん出ていたのが嬉しかったです(知ってますか)。九州という事で、地元芸人枠?で出られたのかもしれません。残念ながら故人になられてしまったようですが、この人の熊本弁のおばあさんに扮した話芸は、味があって好きでした。
最後に辛口ですが、丹波哲郎さんの孫娘役の女の子、かなりの美少女ではあるのですが、セリフが全く棒読みで、正直言って、この役はきついと思いまいした。地方映画で、地元への配慮から、地元の子を採用したのだと思いますが、端役ならいざ知らず、重要な役はきちんと配役すべきです。
厳しいかもしれませんが、きちんと仕事をするならば、東京から演技のできる子役を連れてくるべきと思います。自分としては、この映画にあの女の子役はなくても良かったとも思います。
■地方映画から拡大元々は福岡県の地元だけの公開予定が、出来が良かったのか、東京や大阪など全国で上映されるようになったとの事です(もちろん規模はマイナーですが)。自分も東京ではなく、大阪の第七藝術劇場で鑑賞しました。大阪は十三という、少し寂れた大人の歓楽街の中の雑居ビル6階という、何ともいえないロケーションにある「藝術」劇場ですが、大阪で数少ないミニシアターです。
俳優の藤田まこと氏の若い頃の「じゅう〜そ〜の、ねえちゃ〜〜ん」という唄が、思わず聞こえてきそうな街です。(えっそんな唄知らないって?そりゃ、あたり前田のクラッカー!)