宿題 (2021年)

少年映画評価 A-
作品総合評価 B+
少年の出番 90%(主役です。)
お薦めポイント 少年と老人の心の交流。ファンタジーのよう。
映画情報など 2021年京都国際映画祭で公開。約35分の短編。
(写真は竹澤 煌(きら)君。)


京都国際映画祭2021では映画『消しかすの花』が目的でオンライン鑑賞。他に少年俳優が出演している作品はないかとプログラムをみて見つけた作品でした。全く情報はありません。映画『宿題』とネット検索しても何もヒットしません。

監督は山本理紗さん。同姓同名の女優さんがおられましたが、同じ方なのでしょうか。それはともかく少年映画としては掘り出し物でした。細部には疑問に思うような演出もありましたが、そんなこと気にしなければ良作ですよ。

夜の公園で老人は少年に声をかけた。家まで送ると。二人で歩く夜の道は...

11歳のケント(竹澤 煌)は父を亡くし、母は再婚。そして継父と新居へ引っ越してきた。継父はケントを気遣ってくれたが、亡父の事が忘れられない。そんなケントを次第に疎ましく思う継父。母と継父に子供が産まれてからは、母もケントを無視しだした。行き場のないケントは深夜の公園で一人ボール投げ。

そんなケントに一人の老人(木村明正)が声をかけた。妻はなく長年経営してきた進学塾も閉めた。老人はケントを最後のたった一人の塾生として迎えた。二人は次第に心を通わせる。老人の最後の願いは自分の本名を知る事。空襲で孤児になったのだ。ケントも一緒に役所や元施設の人を訪ねた。でも判らなかった。そして年月が過ぎ...

 ものすごくうるさくて、ありえないほど近い

見出しとは異なり、本作に登場するのは静かな少年と静かな老人です。

少年のケントは実母と継父からネグレクトされています。しかしケントにも非はあります。継父が誕生にくれた新しいグローブ。それを無視して亡父の遺品のグローブばかり使う。そりゃ継父だって腹立ちますよ。11歳にもなればそのくらいの気遣いはしないと。

少年と老人は一緒に探す。
老人の本当の名前を

老人は妻を亡くし、高齢で進学塾も続けれず閉めたばかり。娘や親戚の関心は施設の話ばかり。さらにはお墓のことまで。まだプライドもある老人としては頭に来るでしょう。そして自分の人生は何だったのか。生まれた時の名前が知りたい。これまでも役所に相談していましたが埒があかず。

でもそんな老人の前に現れたのが11歳のケント。悩みを聞き、勉強を教えます。ネグレクトでまともな服もないケントに自分の古着を着せる(少年には迷惑かも)。でも私からすると老人は幸せ者。人生の終盤にこんな少年と心を通じあえるなんて。

見出しは、2011年の米映画『ものすごくうるさくて、ありえないほど近い』。多動性障害気味の少年が老人と一緒に、テロで亡くなった父の秘密を探す。老人役のマックス・フォン・シドーの演技が印象に残るものでした。本作は老人の探索行に少年が寄り添うのですが、静と動の違いはあれ、似たようなものを感じました。

ここからはネタバレです。老人は結局、自分の本名を知らないまま他界しました。でもこれがケントへの宿題になったのでしょう。青年になったケントは老人と同じように塾を経営しています。そして遂に老人の本当の名前が判明するところで映画は終了。ちょっと出来過ぎかも。

亡き父の遺品のグローブが届いた。
ケントの一番の宝物になった。でも継父は...
老人にかけた言葉「徘徊しているんですか?」
(せっかく助けてくれた方に失礼なヤツ...)


ケントは老人の進学塾に通う事になった。
他に生徒はいない。マンツーマンで教えて貰えた。
寒空に服も無いケント。老人は自分のカーデガンを
(加齢臭? でもケントは喜んで着た。いい子だなぁ...)


遂に進学塾の看板を下す日がきた。
(ケントの目、左右で視線が違うのでは...)
ケントは頑張った。そして全寮制の私立中学に合格。
入学式の日、手をつないで歩くのは両親ではなく老人。


おまけ。少年と老人が一日中歩いた日。見つからなかった。でもこの日の夕陽は絶対忘れない...



※後記
老人の経営する塾は、低い机でイスはなく床に座って勉強するもの。江戸時代の寺子屋と同じ。これって現代っ子は無理じゃないでしょうか。脚の形が悪くなるとか、膝の関節に悪影響とか... 今やお寺でも座敷ではなく、椅子を使った西洋教会式でないと信者が集まらないなどとも聞きます。




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