少年映画評価 |
7点 |
作品総合評価 |
6点 |
少年の出番 |
80%(準主役) |
お薦めポイント |
渋い天知茂さんと対称的に可愛い少年 |
映画情報など |
1971年公開/ビデオ発売終了 (写真は、天知茂さんと山本善郎君) |
■「不治の病で夭逝する少年」という定番ストーリー
少年が不治の病にかかり、それまで仕事を理由に息子を放っていた父親が、悲しみながらも心を通わせていく。洋の東西を問わず、本当に手垢のついたストーリーですが、「男女の愛」と同じような永遠の課題でもあり、判っていながらも涙が出てくるものです。
■ストーリー
海洋技術の研究所に勤める増子一郎(天知茂さん)は妻を亡くし、息子の正一(山本善郎君)の面倒を、同居している妹の増子弓子(寺田路恵さん)にみて貰っており、仕事に打ち込んでいる。(妹は独身で、甥である兄の子の母親代りになっている)
再婚を考えている一郎は、ある日出張中に、息子の正一が入院したとの連絡を受ける。慌てて病院へかけつけるが、既に大学病院へ搬送されており、そこで医師から告げられた。小児癌で余命は3ヶ月。叩きのめされたようなショックを受ける一郎。
思えば、この数ヶ月、高知県のある海中施設の設計を任されており、息子が新しい家の設計図を書いたとか、弓子から正一の体調が悪いと言われても、放っていたのだった。一郎は仕事半ばであるが、思い切って休職し、正一と最後の時を過ごすことを決心する。
正一の担任の先生から、正一が描いた絵の海の色が真っ黒だった、という話を聞き、またショックを受ける。海を見たことがなかったのだ。一郎は、自分が精魂こめて設計した施設のある高知県の海へ正一を連れて行く。そこで父と息子は打ち解けていき、正一も心の底から海を楽しみ、短いながらも幸せな時間が過ぎていく。
子供の病気には奇跡があるかもしれない、との思いもかなわず、正一は静かに亡くなった。残された絵には、真っ青な美しい海が描かれていた。
サッカー選手になるのが夢だった。
■正一を演じた山本善郎くん
海が見えた!
少しポッチャリしながらも、はじける笑顔が可愛い少年でした。今となっては彼の情報は何も判りません。またこんな事を言っては何ですが、知りたくもありません。立派な熟年世代になっておられる姿を見たくはない感じがします。(スミマセン)
映画の中で儚く死んでいった、はじける笑顔の美少年のままで、印象に残しておこうと思います。
もっと古い1964年の映画「敗れざるもの」も同じカテゴリーの映画で、超人気俳優だった石原裕次郎さん主演作品ですが、亡くなっていく美少年は小倉一郎さんでした。
■テレビ作品から映画へリメイク
実はこの作品の2年前に、名優ウイリアム・ホールデン氏主演の「クリスマス・ツリー」という映画が公開され、世界でヒットしたようです。白血病で逝く少年が可愛かったこと、また当時は核実験反対という世相も追い風になったのかもしれません。(核=白血病)
1970年に日本テレビでドラマ化されたようですが、さすがに古いもの好きの私も、このドラマは全く知りませんでした。少年役は同じ山本善郎くん、父親役は平幹二郎さん、とのことです。
このドラマが好評だったので、そのまま映画化されたパターンです。現在もこの流れが多いですね。ただ、今の風潮は営業一本やりのせいかもしれませんが。TVドラマでヒットし、ある程度の市場が見込めるものしか映画化しない、リスクをとらない、今の風潮は、映画文化を退廃へと導くものにならなければいいのですが。
さらに1982年にはフジテレビでドラマ化されました。脚本は「北の国から」で大ヒットを飛ばした倉本聰さんで、少し色合いの違ったストーリーになっています。少年役は六浦誠くん、父親役は萩原健一さん、その他、田中邦衛さんなんかも出演される豪華なキャストです。
こちらの82年のドラマは、かすかに見た記憶があります。映画版は再放送で3回くらいは見たことがあり、レンタルビデオでも1回みました。再放送は、だいたい貧乏UHF局で、しかも平日昼間という「時間埋め」的な扱いで、おまけに大阪では、ゴーストだらけ、という散々な放送でした。
どこかで、フィルム起しで、きれいになった画質でDVD発売してくれる、なんて事を望むのは無理でしょうか。
※追記。2014年になり、DVDではありませんが、BSの日本映画専門チャンネルで、ハイビジョンにリマスターされて美しい映像で放映されました。改めてじっくり鑑賞しましたが、記憶よりも天知茂さんの渋い熱演に感動しました。
お腹に腫瘍が見つかった。
最後の時を父子で。笑顔が切ない。
■なぜ、夭逝する少年を描いた作品なのか
最初に言いましたように、このテーマは東西、今昔を問わず、好まれるようです。前回レビューした「Little DJ」もそうでした。もちろん、女性や少女が夭逝する作品も数多くありますが、なぜか少年が亡くなるというテーマを好む(誤解を生む表現で申し訳ありません)層が多いように思います。
実際に、男女関係なく子供を亡くされた方は、耐え切れないテーマと思います。簡単に「死」を扱って感動を押し付けるのではなく、もっと敬虔な気持ちで製作して欲しいと、年をとってくると思うようになってきました。