子どものおもちゃ (2017年)
少年映画評価 |
6点 |
作品総合評価 |
6点 |
少年の出番 |
100%(少年6人のアクション) |
お薦めポイント |
嫌味の無いハードボイルド風ガンアクション |
映画情報など |
製作年不明。PFF2017入選、準グランプリ獲得 (写真は主役やすし役の少年) |
第39回PFF(ぴあフィルムフェスティバル、2017年)のコンペティション部門に選出された17作品の一つ。第39回の応募は548作品、そのうち入選は17作品と約33倍もの超難関。そして本作品は見事準グランプリに輝きました。(2017.9.29発表)
前回レビューした「さようなら、ごくろうさん」と同じ枠で鑑賞しました。52分の中短編ですが、映画の密度の濃さはシネコンでかかる商業映画に引けを取りません。しかしながら子役達のセリフの問題もあり、私は本作品ではなく「さようなら、ごくろうさん」に投票しました。
(出演者の方々が側におられた事もあるかもしれません)
やすしは引越し作業を抜け出して学校へやってきた。まるで西部劇のガンマンの決闘!
(シャツのボタンを上までしめているのが、なんか可愛い)
■ストーリー
(たぶん)近畿地方のある山村の小学校。やすし(神保舜莉紋)たち5人の少年が、学校でおもちゃのピストルを使ったサバイバルゲームを繰り広げている。ゲームとはいえ真剣そのものの殺し合い。撃たれた者は、学校のチャイムが鳴る17:30まで死んでいなければならない(身動きしてはいけない)。
最後まで残るのは、やすしと一匹狼の少年(横路周東)。しかしお互いに止めを刺せないままチャイムが鳴った。やすしは、また明日やろうと言うが、少年達はやすしが明日引越してしまう事を知っている。しかし、やすしはやると言う。一匹狼の少年は冷ややかな目で何も言わない。
そして翌日、やすしは引越中に抜け出して学校へやって来た。いつもの5人の他に、中学受験を目指す少年もいた。彼はゲームなんかしないが、やすしへのお別れの挨拶をしに来たのだ。そして最後のゲームが始まった。それは子どもの遊びとは思えない真剣勝負。
■子どものハードボイルド・アクション、意外に違和感なし
出演者が全て少年少女で、壮絶なガンアクションを繰り広げた映画といえば、1977年のイギリス映画「ダウンタウン物語」が有名です(当時美少女だったジョディ・フォスターが話題)。しかしこれはあくまで大人のギャングの闘争を子供が演じているもので、子供同士の闘争ではありません。
2008年の映画「斬 KILL(こども侍)」が本作品に近いものだと思います。これも子供同士の復讐劇なのに、意外にカッコよくて熱くなりました。大人のサバイバルゲームというと、悲惨な戦争体験もないのに軍服やコンバットスタイルに身を固め、一体何をやってるんだと偏見を持ってしまいます。
それを子供がやると、嫌味がなく結構真剣に見えてきます。もちろんこれは監督である松浦真一氏の手腕であり、それが認められて、548作品のベスト2に選ばれたのだと思います。
バトルの相手たち。一匹狼の少年はここにはいない
(右の白シャツが受験少年。参加しないはずだったが)
遅れてやってきた一匹狼の少年。
(子供なのにこの貫禄)
■アクションはいいけれど
52分という短さを感じない充足感と緊張感が持続できる作品である事は間違いありません。しかし子役6人のセリフ。もう本当に棒読み。ひょっとすると東京の観客は(日本人が外国俳優のセリフの上手下手が判らないのと同じで)関西弁の子供はあんなものと思ったのでしょうか。全く違いますよ。
上映後の監督インタビューでは、もう撮影期間が短くて時間に追われて追われて大変だったとの事。ガンアクションはおもちゃですが、映像表現では火薬を使った本格的なもの。撃たれて倒れるシーンなどは大人顔負け。この辺に時間を取られて、セリフ指導に手が回らなかったのでしょう。
東京の子役ならもう少しマシですが予算の問題でしょう。ここにも関西の凋落のカゲ。昔は関西発のTVドラマも結構あり、関西の児童劇団の子でもキャリアが積めたのですが、今や全部東京一局集中。
(すみません。以上は全て私の推測。間違っていたらすみません。なお少年俳優は6人とも、ルックスだけは東京の子に引けを取りません。演技経験だけ。)
一人、また一人と撃たれて死んでいく
(映像では血はなし。でも銃煙と火薬の音は迫力)
倒れながら射撃するやすし
(アクションシーンは大人顔負け)
■がんばれ監督さん
さて本作品の松浦真一監督は、立命館大学で映画の勉強をしたものの卒業後は古書店でアルバイト生活。そんな中での映画製作は本当に大変だったと思います。しかし逆に言えば、そんな境遇でもこれだけの作品が作れるのです。
大手の映画会社やTV局は、話題だけを狙って有名芸人やタレントの気まぐれみたいな作品に巨額をサポートしていますが、若い志のある人間に、その1%でも支援する気は無いのでしょうか。(メディア系では日活とTV朝日はPFFをサポートしていますが、メジャー系は皆無)
PFF準グランプリをきっかけに、松浦監督が将来素晴らしい映画監督になってくれればと祈ってやみません。最後に蛇足ですが監督へのお願い。本作品の少年俳優たちの情報があまりにも無さすぎて。クレジットには役名と俳優名を載せて欲しい。子供とはいえ俳優さんなのですから。