こむぎいろの天使 すがれ追い (1999年)

少年映画評価 6点
作品総合評価 6点
少年の出番 100%(堂々の主役)
お薦めポイント 長野の豊かな自然の中で駆け回る少年たち
映画情報など 1999年製作。VHSビデオ廃盤
(写真は主役の松澤邦典君)


ずっと良質な児童映画や動物映画を撮ってこられた後藤俊夫監督の作品。ただ日本のメジャーな映画製作会社とは無縁ですので、学校や地域での上映が主体でなかなか劇場公開されないのが残念なところです。当サイトでは1983年の映画「こんにちはハーネス」が後藤監督作品です。

こむぎいろの天使は1978年の雀と少年の方がテレビでも何度か放送されており、子役の松田洋治君の達者な演技が印象に残っています。(録画等が残っていませんのでまだレビューは書けていませんけれど。)

今回レビューするすがれ追いは存在も知らなかったのですが、たまたま録画を見る機会があり、その時のスクリーンショットが残っています。

映画のラストシーン。都会っ子の健一(左)と長野の自然児サブ(右)
(健一はたくましくなって東京へ帰る事になった)
■ストーリー

長野県の伊那地方。小学生のサブ(松澤邦典)は勉強は今一つだが活発な少年だ。待望の夏休み、さあ遊ぶぞ! しかしクラスの連中はサブを敬遠して誰も集まらない。仕方なく東京から転校してきたばかりの健一(吉瀬丈二)を強引に連れ出す。健一は喘息の持病があり、空気のきれいな信州で療養を兼ねてやってきたのだ。

この地方ではすがれ(地蜂)に糸をつけて後を追い、巣を見つけて蜂の子を食用にする。サブと健一はひょんな事から「すがれ」の巣を見つけて持って帰った。みんな旨そうに蜂の子を食べるが、東京生まれの健一はどうしても無理。ひ弱な健一だがサブと一緒に野山を駆け回る。そして捨て犬を見つけてカメオと名付けて飼うことに。

やがて夏が過ぎて秋になり、山が色づき始めると今度は松茸のシーズン。松茸狩り大会では名人を抑えてサブと健一が優勝。それはカメオの嗅覚のおかげ。そして冬。「すがれ」は新しい女王蜂が生まれて旅立つ時。すっかり元気になった健一も東京へ帰る事になった。サブは...

■蜂(すがれ)への愛に満ちた作品

蜂といえばニュースで話題になる迷惑生物の1番手。スズメバチ。所構わず巣を作っては通りかかる人を襲う。「キラー・ビー」なんて米映画もありました。しかし長野県は違うのでしょうか。いややっぱり同じ。スズメバチと地蜂(すがれ)は別物。考えればミツバチだって愛される蜂ですし。

映画の舞台は後藤監督の出身地。それだけに映画のどのシーンを見ても郷土愛に満ちています。東京からきた虚弱少年にパワーを与えて成長させる素晴らしい土地。長野にもイジメや排他的ムラ社会もあるのでしょうけれど、そんなもの児童映画には関係ありません。

日本でも欧米でも「都会から地方へ引っ越してきた少年」というのは定番ストーリー。必ず地方の陰湿なイジメの洗礼が描かれます。リアルといえばリアルでしょうけれど。少年に生きる勇気や夢を与える事を主眼にすれば、あんまりな表現はマイナスになるのではと思っています。

甘い描写や楽天的な考えを「お花畑」とか言いい、もっと現実を直視しろ!なんてのも正論には違いありませんが、私はお花畑でいい、少年の間は。そう思っています。

さあ夏休み。遊ぶぞ!
(でもサブはみんなに敬遠されて)
東京から来た健一に目をつけた
(まあ仕方ないか、こいつと遊ぼう)
サッカー練習中のマサル(左)
(サブに呼び出されしぶしぶ立上る)


すがれの巣を見つけて
(頭は防御しても下は短パン...)
さあ蜂の子(巣)だ。持って帰れ
(サブは健一に差し出した)
ええっ...たじろく健一
(一口食べて戻してしまった)


捨て犬を見つけて飼う2人
(薄汚い老犬だが、実は有能な犬)
すがれの巣をのぞく2人
(健一はしだいに逞しく...)
医者の検診。もう心配ない
(嬉しそうな健一。でも別れが)


サブから健一への贈り物
(ダンボールの中は蜂の巣)
東京へ帰る日は会わないぞ
(だって...涙をぬぐうサブ)
メイキング映像から
(サブ役の松澤邦典君)


(補足)「児童映画を見たい」にはもっと詳しいレビューがありますのでご参考まで。こちらの管理人様には随分お世話になりました。本当に有難うございました。






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