ふるさと (1983年)
少年映画評価 |
B+ |
作品総合評価 |
B+ |
少年の出番 |
70%(準主役) |
お薦めポイント |
認知症の老人が少年との交流で元気を回復する。 |
映画情報など |
1983年国内公開。2013年DVD発売。 写真は浅井晋君。 |
良質な映画を制作してきたこぶしプロダクションの第1回作品。どこか(たぶんテレビ)で見た記憶があるのですが忘れていました。公開30年を記念してDVDが発売されたそうですが、私は最近になって、ようやくそのDVDを鑑賞しました。
夏休み。少年と老人は毎日のように釣りに出かけた。老人の認知症なんか飛んでいった...
岐阜県の徳山村はダム工事で水没する。村で暮す老人(加藤嘉)は認知症が進んでいる。同居する息子はそんな老人を疎ましく思っていた。しかし、ちょっとしたキッカケで隣家の千太郎(浅井晋)と釣りをするようになり、老人は元気を取り戻す。小学生の千太郎は老人の釣りの知識に興味津々。
夏休み最後の日、老人は千太郎を長者ケ淵という秘境に連れていくと約束する。そこはアマゴの宝庫。しかしあいにくの台風で中止。2学期が始まり、釣りも出来なくなった。ダム完成が近づいた日、千太郎は老人にねだる。長者ケ淵に連れてって! 2人は2時間かけて長者ケ淵へ。しかし老人はそこで息を引き取ることになった...
岐阜県でダムの底に沈んだ徳山村は実在の場所です。もちろん出演者は俳優さんが演じていますけれど。老人役の加藤嘉さん。東映を中心に数多くの作品に出演。児童映画では1973年『アフリカの鳥』での老人役が印象に残っていました。しかし本作ではその姿に驚きました。
身体はやせ細り、お顔には骨が浮き出ており、痛ましく思えるのです。その老人を息子が怒鳴り散らします。ただ息子の嫁が老人に優しいのが救い。息子も村が水没し、これからの生活など将来への不安で苛立ちがあったのでしょう。長者ケ淵で倒れたと聞き、遠い山道を走って駆けつけます。最後は息子の腕の中で老人は息を引き取ります。息子も老人も嫁もみんな根は優しい人でした。
そして血がつながっている訳でもない千太郎少年。老人にとっては孫であり、時には親友でした。老人と少年が一緒に釣りをする。老人は威張らず、少年も老人を尊敬する。人生の最後にいい伴侶?を得て幸せだったかもしれません。
千太郎を演じたのは地元岐阜県の小学生。最初はセリフなど心配しましたが、自然な感じで好演でした。脇を固める俳優陣がすごい。老人の息子と嫁は長門裕之さん、樫山文枝さん。前田吟さん、樹木希林さんも。小さなプロダクションとしては本当に豪華なキャストでした。
夏休み。宿題がたまって憂鬱な千太郎少年。
その時、窓から隣の老人が声をかけてきた。
最初、老人は自分の孫と千太郎を混同していたが...
釣りの話で盛り上がってきた。
老人は少年をつれて川へ行った。
なけなしのお金で少年に竿を買ってあげた。
美しい揖斐川の清流。やった、釣れた。
老人の指導に少年は舌を巻いた。
少年は老人に懇願。長者ケ淵につれて行って。
今行かないと、二度といけないんだ。
秘境 長者ケ淵。ここで老人は倒れた。
少年は2時間の山道を走って村へ。助けて!
※後記
加藤嘉さんは当時70歳。現在ならまだ前期?高齢者です。本サイトでは認知症と書きましたが、当時は痴呆症という失礼な表現。でも加藤嘉さんは本作でモスクワ国際映画祭で最優秀男優賞を受賞。国内でも毎日映画コンクールや日本アカデミー賞で受賞。数多くの出演作品の中で受賞したのは本作だけ。それだけ渾身の演技でした。