いちご同盟 (1997年)

作品評価 人生に希望を見出せない少年。その心情をしっかり描いた佳作。
少年の出番 主役です。熱演でした。
お薦めポイント ピアノ。野球。難病の少女。岸部一徳さんも...
映画情報など 1997年公開。DVD絶版。(中古相場は高め)
写真は大地泰仁君。


三田誠広さん原作小説の映画化。「いちご」とは15歳のこと。将来の進路や人生の意味に悩む少年のお話。DVDは早くに絶版になり、なかなか見る機会が無い作品です。こういう作品こそネット配信してくれれば有難いのですが。

ナオミの入院する病院へ行くテツヤ(谷口秀哉)とリョウイチ(大地泰仁)
片や野球部のエースで4番。片やピアノ以外何の取り柄もない少年。2人の関係は...

リョウイチ(大地泰仁)はピアノが好きな中学3年生。しかし周囲の理解を得られず厭世的な感情にとらわれ、自殺すら考えている。一方同学年のテツヤ(谷口秀哉)は野球部のエースで強豪高校への推薦入学も決まっていた。そんなテツヤがなぜかリョウイチに依頼した。俺の野球の試合をビデオで撮影してくれ。

テツヤの幼馴染のナオミ(岡本綾)が不治の病で入院しており、自分の勇姿を彼女に見せるためだ。戸惑いながらも撮影するリョウイチ。病室でビデオを上映した時、リョウイチはナオミに初恋。ナオミから病院でピアノを弾いて欲しいと言われ、テツヤに遠慮しながらも得意の腕を披露。しかしナオミは逝った。残されたリョウイチとテツヤは15歳の約束を交わす。ナオミのためにも絶対死なない。


この当時、少年少女の自殺は社会的問題でした。もちろん今でも。主人公のリョウイチの夢はピアニスト。しかしピアニストである母はなぜか理解がありません。進路相談でピアノ科に進みたいと言っても、担任はお前の偏差値ではとても無理だ。野球と違って実技だけで行ける高校ではないと...

リョウイチには1歳下の弟(池田貴尉)がいますが、彼は成績優秀で私立中学。しかし夢はサラリーマン。そう割り切れる弟に感心しつつも、燃えるものがありません。頭をよぎるのは飛び降り自殺した少年のこと。その現場である屋上に行って考えます。自分も死の誘惑にかられて...

そんなリョウイチに声をかけたのが、野球部の4番でエースのテツヤ。なぜリョウイチなんかに声をかけたのでしょうか。実はその前にテツヤが先にピアノの弾くリョウイチを撮影(隠し撮り?)しています。まさかBL?。それはともかく豪速球と豪打で輝くテツヤを撮影していると、リョウイチの心にも火が灯り始めたようです。

難病のナオミは生きる気力を無くし手術も拒否していましたが、リョウイチのピアノを聞いて手術を決意。ナオミの父(岸部一徳)はリョウイチに感謝。しかし何より火がついたのがリョウイチ。初めて愛する人間が出来たのです。しかしその彼女は手術をしても逝ってしまいました。でもリョウイチに着いた火は消えません。

リョウイチ役の大地泰仁君の演技力は抜群です。15歳の悩みと欲望をストレートに表現してくれて映画を引っ張ってくれました。テツヤ役の谷口秀哉君。演技はど素人丸出し。それが却ってリアルでいいのです。野球が本職なのか、ピッチングフォームは本当に素晴らしい。二人の関係は何となく名作『少年時代』の2人を思い出しました。


リョウイチは決まってあるビルの屋上へ行く。
(映画の舞台は山口県岩国市)
ここからある少年が身を投げた。今でも花が。
リョウイチは手すりの壁に思いを綴る。生きてたって...



野球部のテツヤが窓からリョウイチを撮影する。
どこかリョウイチに惹かれるところがあったのか...
体育の授業。リョウイチはいつもビリ争い。
(当時の中学生の短パン体操服が懐かしい)



テツヤの勇姿をビデオ撮影するリョウイチ。
(これはラストに近いシーンですけれど)
リョウイチもナオミの病室へ行った。一目惚れ。
テツヤはナオミと一緒の布団に。マア...イヤラシイ...



ナオミのお願いで、リョウイチはピアノを弾いた。
病院内の娯楽室。他の患者も聴き惚れた。
ナオミの父はリョウイチに感謝した。
(岸部一徳さんの飄々とした姿は今も同じ)



おまけ。リョウイチには1歳下の弟がいた。私立中学に通う秀才。しかし兄弟の関係はどこか希薄。
(演じた池田貴尉君は当時の人気子役の一人。もう少し出番があれば)


※後記
難病少女ナオミの父親を演じたのは岸部一徳さん。これを書いている2024年のNHKドラマ「昔はおれと同い年だった田中さんとの友情」での演技が絶賛されていますが、約30年前の本映画でも全く同じ雰囲気。一つのスタイルと空気を持った俳優さんですね。

本映画の2年後に、NHKドラマ愛の詩シリーズの中でドラマ化されました。当時のジャニーズJrの人が主演したそうですが、殆ど情報がありません。ひょっとしてマスターテープも残っていないのかもしれません。そんな勿体無い事はないと思いますので、何とか再放送とか配信とかDVDにならないものでしょうかねぇ...





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