最後の命 (2014年)

作品総合評価 7点
少年の出番 5%(小学生時代のみ)
寸評 邦画では久々にみる重い話。ただ少年の出番が。
【少年映画でない理由】出番が少ない事
映画情報など 2014年公開。DVD発売中。


最後の命なんてタイトルだけを聞くと、時代劇のような感じです。実際にみると、邦画では久々に、重いテーマの作品でした。「誰も知らない」の柳楽優弥さん主演作品で、話題になるかと思ったのですが、上映館は全国でもほんの僅か。こういう作品を見る人がもっと増えて欲しいのですけれど。

■ストーリー

映画では、主人公の青年、桂人(柳楽優弥さん)の、現在(25歳)、高校生時代、小学生時代の3つのエピソードが、複雑に交叉しながらストーリーが展開します。それを書くのは少し面倒ですので、時系列に軽くまとめて紹介します。

小学生の桂人(土師野隆之介君)と、裕一(板垣李光人君)は親友だった。ある夜、裕一が家出するというので、桂人もつき合って家を抜け出した。秘密基地にしていた廃工場に行くと、衝撃的な事件に遭遇してしまった。二人の知り合いで、仲の良かったホームレスの女性が、同じホームレス達から輪姦され、そのまま強殺される。

家出は中止。しかし警察には何も言えなかった。これが二人の人生の大きな枷(かせ)になっていく。やがて高校生になった二人。事件の重りは二人の心から消えないが、その方向性が桂人と裕一では、対照的になってきた。桂人は襲われた女性の意識が、裕一は襲ったホームレスの欲情が、それぞれの心を支配していく。

高校卒業後、二人は別の道を進み、会う事はなくなった。25歳の桂人は、まだ学生(大学院生?)だが、恋人は出来ても肉体関係は持てない。あのホームレスの女性の叫び声が聞こえてくるのだ。性欲はデリヘル(知らない? 性欲処理をしにきてくれる商売の女性ですよ)で処理していた。(学生なのに金持ちなんですね)

そんな時、桂人の部屋でデリヘルの女性が殺される事件が起きた。当然、桂人に嫌疑がかかったが、捜査の結果、強姦魔として指名手配されている男の犯行と判った。その男とは、裕一(矢野聖人さん)だった。いったいどうして。

■友情、憎しみ、それとも愛情?(雨のち晴レルヤの出だしっぽく)

二人の男が、少年時代に受けた衝撃を共有し、それを慰め合い、しかし時が経つにつれ二人の思考が異なりはじめ、互いに「あいつがいなかったら」と思うようになる。しかし最後は、まるでホモ・セクシャルのような関係に。

とにかく柳楽優弥さんは、はまり役でした。ぼそぼそっとしたセリフ、女性に対するぎこちなさ、本当に自然体で演じています。「誰も知らない」当時からの、強い目力はますます磨きがかかってきました。一時は俳優も引退かと思われるような荒れた時期もあったとの事ですが、この作品では、本当にいい青年俳優になっています。

相手役を演じた矢野聖人さん。経歴はよく知りませんが、やはり、はまり役でした。少しセリフが浮くような部分もありましたが、柳楽さんとの相性は抜群。何よりも驚いたのが、子役を演じた板垣李光人君と本当によく似ていること。そのまま大人になったリアル感が良かったですね。

しかし暗い話です。最後は少し明かりが見えたのか、それとも、もっと重い枷を背負ってしまったのか。考えさせられる作品です。エンターテイメント性は薄いかもしれませんが、こんな作品を見て考えてくれる人が多い方が、いい社会になるのでは(少し大げさですか)

土師野隆之介君。イケメンになりました
板垣李光人君。角度により女の子に見えます

■二人の少年俳優

この作品を見るきっかけは、勿論予告編でみた二人の少年俳優の存在でした。主人公の少年時代を演じたのは土師野隆之介君。2011年の「ロック わんこの島」では、タレ目が可愛い、素朴な子役でした。本作品では、ずいぶん美少年になりました。タレ目ではなくなりましたが、柳楽優弥さんとは少し系統の違う顔。でも違和感はありません。

一方、裕一を演じた板垣李光人君。予告編をみた時は女の子にしか見えませんでした。かなり美形です。先ほども書きましたが、成長した役の矢野聖人さんと本当によく似ています。少年時代の二人のシーンがもっとあれば、少年映画としても評価できたのですが、こればかりは原作があるので仕方ありません。

それにしても、女の子のような裕一が男っぽく、眼力の強い桂人が女っぽい(というか、常に受動的な性格)役になっているのが、皮肉的な感じです。でもその方が、面白いかもしれません。

皆様も是非映画館で、もしくはDVDが出たらご覧になって下さい。たまにはこんな文芸的な作品もいいものですよ。私も原作者の中村文則さんの小説を読んでみたくなりました。芥川賞作家なんですね。実はよく知りませんでした。






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