赤い雪 Red Snow (2019年)
作品総合評価 |
5点 |
少年の出番 |
10%未満 |
寸評 |
雪国の陰鬱な空。記憶に残る赤は血の色... 【少年映画でない理由】出番過少。 |
映画情報など |
2019年公開。DVD発売中. 写真は永瀬正敏さんの少年時代役の少年(氏名判らず) |
たまたまWOWOWで鑑賞した作品。ミステリアスなタイトルに惹かれたのですが、日本映画らしい陰鬱で暗い作品でした。同じ年の映画『最初の晩餐』で好演した永瀬正敏さんが主役ですが、全くテイストの異なる作品。
少年失踪事件の真実とは。本来ならば少年俳優がキーとなるはずなのですが、演じた子役さんの名前すら識別できませんでした。キャストロールにはあると思うのですが、最近は調べる気力が失せてしまって...
雪の中で弟は行方不明になった。兄の記憶。赤い上着が雪の中に消えていく....
■ストーリー
少年だった白川(氏名不明)は雪の中で弟を見失った。そのまま弟は行方不明。弟を誘拐した容疑者は素行の悪い女だったが証拠不十分で結局は起訴されず。30年後。白川(永瀬正敏)は事件をひきずったまま。そこへ雑誌記者(井浦新)がやってきた。容疑者の女は死んだが娘(葉葉葉)が近くに住んでいる。彼女は真相を知っているはずだ。
白川と記者は娘に話を聞く。娘も一筋縄ではいかない荒んだ女だった。死んだ母のヒモだった男(佐藤浩市)と同棲していた。白川は問い詰める。怒りのあまり娘の首に手がかかった。しかし娘の言葉に驚愕。お前が弟を殺したんじゃないか!そして記憶が蘇ってきた...
■どうして日本の雪国はこんなに暗いのか...
すみません。こんな小見出しでは雪国の方に叱られそうで。「日本の」ではなく「日本映画で描かれる」という意味です。そりゃ豪雪に閉じ込められる北国ですから仕方ない気もします。でも北欧やカナダではファンタジックな作品も多いのに、日本映画や文学はひたすら暗い...
上記のストーリーでは省略した事件真相のネタバレです。白川の両親は弟ばかりを偏愛。白川には虐待とすら思われるような冷たさ。そのため心の中では弟に対する憎しみがあった。しかし弟を憎んではいけないという自制心もあった(子供なのに自制心を持つのが素晴らしい)。
一方で容疑者の女は実の娘を虐待。食事も与えず押入れに監禁。娘は夜中に押入れから出て食べ物を漁るという悲惨さ。しかし他人の男の子には異常な愛情を示す。実は白川もこの女から可愛がられた事があったのだった(何をされていたのか...)
事件の日。弟を探しに行った白川は、女の部屋のドアポストの隙間から弟がいるのを見た。急に嫉妬心が燃え上がる。ここから先は少し曖昧です。女は何かの理由で弟を殺してしまった。それをポストの隙間から見つめる白川。同じ光景を押入れの隙間から娘が見つめる。
白川は弟を助けもせず、声も上げず、雪の中へ走り去った。心の中には殺人の恐怖と、弟がいなくなってよかったという思いが交錯。そしてその記憶を封印してしまった。そして30年後。この悲惨な記憶を共有していた白川と犯人の娘。2人は一艘の舟に乗って海へ出ていった...
母親は弟ばかり可愛がった。
(確かに弟は可愛い子供だった。)
弟が投げた物が当たり、血が噴き出た兄。
しかし母親は兄を叱った。
(憎悪に満ちた目で弟と母を睨む)
「弟を探してこい」と言われて雪の中を歩いていく兄。
もしかして、ここではないか。優しいおばさんがいるアパート。
家では可愛がって貰えない兄だが、おばさんは可愛いがってくれた。「今度は弟も連れてらっしゃい」
ドアの郵便受けの隙間から部屋の中を見た。おばさんが弟を抱いていた!
このおばさんまで奪うのか!思わず嫉妬と憎悪の念にかられた...
おばさんの優しい顔は仮面だった。何かの理由で弟を殺してしまった。
助けは呼ばない。弟はいなくなった方がいい。おばさんの事も警察には話さない。忘れよう...
※後記
『最初の晩餐』では老人メイクがリアルで本当に70歳くらいに見えた永瀬正敏さん。本作はさすがに若かった。一方、凶暴なヒモ男役の佐藤浩市さんは老人役ですが鬼気迫る演技。井浦新さん演じる記者を殺して埋めてしまいます。この記者は実は女の被害者の遺族だったのでしょう。取材が執拗でしたから。しかしあっけなく殺されてしまって...