茜色に焼かれる (2021年)

作品総合評価 B-
少年の出番 90%(準主役)
寸評 2021年度の映画賞多数。でもすっきりしない。
【少年映画でない理由】年齢オーバー(に見える)。
映画情報など 2021年公開。BD/DVD発売中。
写真は和田庵君。


キネマ旬報ベストテン第2位。主演の尾野真千子さん、新鋭女優の片山友希さんが高い評価を受け、各映画賞で主演女優賞、新人賞など多数。息子役の和田庵さんも新人賞多数。本当に評価の高い作品です。

池袋暴走事件を起こした(上級国民?の)高齢者を思わせるようなカットから映画が始まります。不条理なエピソードが山盛りの中、主演の尾野真千子さんの大熱演が光ります。しかし不条理なことは、そのまま残ってしまいました。

ラストシーン。母と息子は自転車で家に帰る。茜色の夕焼けがいつまでも続く...

13歳の純平(和田庵)は母(尾野真千子)と2人暮し。父は元政府高官の男性に車ではねられて即死。元高官の明らかな違反だったが、認知症との事で逮捕もされず謝罪もなし。母は見舞金の受取りを拒否。やがて元高官が死に、母は葬儀に行くが家族や弁護士から猛抗議を受けて退出させられた。

コロナ騒動で母の経営するカフェは閉店。母は風俗とパートで家計をやりくり。父の浮気相手の子の養育費まで払っている。風俗の同僚の若い女性ケイ(片山友希)が母を慕って親しくなる。息子純平もケイに密かに恋してしまった。純平は文句一つ言わず母を支える。それでも学校では卑劣なイジメにあっていた。

母は元同級生の男と親しくなり再婚を決意。しかしこの男もクズ人間だった。裏切られた母はここで爆発。刃物を持って男に襲いかかる。なんと純平も助太刀。そこへ現れた風俗の店長が男を始末してくれた。やがて純平があこがれていたケイが病死。葬儀の帰り道。純平は母と自転車で2人乗り。茜色の夕焼けの中を...

 薄ら笑いのパワー

尾野真千子さん演じる母親。責められたり窮地に陥った時。キレたりヒステリーを起こすのか思っていると薄ら笑いを浮かべます。とにかくこれがいい。狂気からくる薄ら笑いは嫌ですが、相手より一段上のレベルに立っての余裕というかパワーを感じます。

その正反対なのが、同じ2021年の映画『明日の食卓』で同じ尾野真千子さんが演じた母親。とにかく「何でアタシがこんな...」と負の感情を撒き散らします。もう見ているだけで、こちらも嫌な想念が感染してしまいそうで。それに比べると、本作の母親はある意味快感です。

 13歳に違和感が...

和田庵さん演じる息子。しっかりした正義感を持ち、母の気持ちを支えています。この息子がいるだけで母親はどんなに救われたことでしょう。思春期らしくマスターベーションのシーンもありますが、清潔感のある男子。しかし設定は13歳。中学1年生でしょうか。

和田庵さんは撮影時15歳ですが、大人びた顔も筋肉質の身体も13歳にはとても見えません。それが気になって(これは私の変なコダワリ)。高校1年生の設定にすれば、全く違和感がないのに。息子を中学生にする必然性があったのでしょうか。

 男は本当に人間のクズばかり

本作に登場する男。どうしてこんなにクズばかりなのでしょう。交通事故を起こした高齢者とその遺族。暴言を吐きまくる弁護士。パート先のパワハラ上司。無能な中学校の担任。風俗にやってくるクソ男たち。風俗の同僚ケイの父親。母を弄ぶ元同級生の男。そしてオダギリジョーさん演じる死んだ父親。彼もまた不倫して隠し子がいたとは。

 そんな人間のクズに鉄槌を...

ラスト。元同級生のクソ男には鉄槌を下して溜飲が下がりましたが、上記のクソ男たちはそのまま、のうのうと生きていくのかと思うと腹が立ちます。特に息子をイジメる3人のクソガキ。こいつらはアパートに火をつける犯罪まで。まあ私の人間の器が小さいのがいけないのでしょうけれど。でもこんな作品は批評家の先生方がいくら高評価しようとも、見ないに越したことはありません。


息子役の和田庵君と母親役の尾野真千子さん。
(母子家庭ですが、二人の信頼関係は理想的)
息子は読書に励む。死んだ父親の蔵書なのか。
そして学校の成績も優秀だった。


息子は思春期。性への欲求にめざめる頃
(母に見られてしまいますが...)
和田庵の身体は筋肉質。13歳には見えない...
(アクションスターを目指して筋トレでも?)







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