遠き落日 (1992年)
作品総合評価 |
B |
少年の出番 |
約7分(藤田哲也君の出番) |
寸評 |
野口英世の等身大の生涯。やっぱり人間だった。 【少年映画でない理由】出番過少。 |
映画情報など |
1992年公開。DVD発売中。 写真は藤田哲也君。 |
子供の頃から偉人伝を読んで親しんできた野口英世の生涯を描いた作品。偉人といってもも聖人のように持ち上げるだけではなく、人間としての弱みなども描いています。日本映画専門chでたまたま見たのですが、少年時代役の藤田哲也君が大変印象に残りました。
小学校の成績上位者が教頭の小林先生に呼ばれた。清作(中央)は断トツの成績だった。
でも高等小学校への進学は迷っていた。これ以上、母に迷惑はかけれない...
福島県の貧しい農村で生まれた清作。幼いころに大火傷を負って左手が癒着してしまった。母(三田佳子)は責任を感じて清作を一生懸命育てる。学校でイジメを受けるが、何とか耐えて勉学に励む。12歳になった清作(藤田哲也)貧しさから高等小学校進学を断念するが、小林先生(仲代達矢)はそれを残念に思い、説得して進学させる。
手術を受けて左手が開くようになる。上京して医学を志し医師となった。しかし低い身分出身の英世(清作から改名)は教授陣との対立から米国に渡る。細菌学で頭角を現した英世は米国人と結婚。アフリカで黄熱病の研究をしているうちに罹病してこの世を去った。
野口英世がもう少し長生きしていれば日本人初のノーベル賞受賞者だった、そんな話をよく聞きました。でも最近では野口英世氏の業績には誤りがあったとされています。学問の事ですから私にはよく判りませんが、ちょっと残念です。昔読んだ偉人伝の価値が下がってしまったような...
英世本人が非常な努力をした事は間違いありません。でも本作を見ると母親の思いに涙が出ます。火傷を負った重荷。ずっと背負い続けたのは英世本人はもちろん母親も同じ。いや母親の方が重かったのではと思います。でも英世が成功して、その重荷を解放されたのが本当に良かった。
さて少年俳優の藤田哲也君。主役を張った映画『少年時代』の頃より、キリッと引き締まった美少年になりました。貧乏でも彼のような才能のある少年の将来。これを惜しんでくれた小林先生のような先生がいた事が本当に救いです。
何かを成功や成就するためには、本人の努力はもちろん、それを支えてくれる人たちに巡り合うことがいかに大切か。もちろん、そんな人と巡り合うのは棚ぼたでなく、勉学に励んでいたという努力があった事も重要。いやいや何か説教的な話になりそうなので、ここまでとします。
たび重なるイジメ。その原因はこの左手だった。
清作はナイフで左手の指の癒着部分を切ろうと...
激痛に涙がこぼれる。母が飛んできた。何するの!
二人で抱き合いながら、母は涙で「堪(こら)えて...」
小林先生たちとの面談。清作は左手を見せる。
小林先生は言った。先生の家へ来てくれないか。
母と清作は先生の家へ。先生は母を説得した。
高等小学校へ進学する事に決まった。
先生の家からの帰り道。母と二人で歩く道。絶対に頑張るんだ。
猪苗代湖の夕焼けが美しい。もう清作の身長は母を追い越そうとしている。
※後記
本作は渡辺淳一氏の同名小説が原作とのこと。渡辺氏も医師ですので、同じ医師だった野口英世氏について、世間が認識している偉人ではなくて、弱い人間の部分も描きたかったのでしょうか。ご自分も医師だから書けるのかもしれません。