めんたいぴりり (2019年)

作品総合評価
少年の出番 20分ほど(結構重要な役どころ)
寸評 人情味あふれる人たち。ただ、やや昭和を美化し過ぎ。
【少年映画でない理由】出番少なめ。
映画情報など 2019年公開。DVD発売中。
写真は長男役の山時聡真君。


辛子明太子を世に出した「ふくや」の創業者を描いた作品。2013年にTV連続ドラマとして放送。本作は2019年に映画化されたもので、主人公が日本に戻ってからのエピソードが中心。時代背景としては『Always3丁目の夕日』と同じ頃でしょうか。

博多といえば祇園山笠。先頭を走るのは長男と次男。締め込み姿も凛々しく。

戦後、釜山から引き上げてきた海野(博多華丸)と妻(富田靖子)は、博多の中洲で、ふくやを開店。釜山の味を思い出して辛子明太子を作って売り出した。最初は不評だったが次第に評判になり始める。するとレシピを盗む業者も現れたが、海野は気にしないどころか、みんなにレシピを教える。名物にして博多の町を盛り上げるために。

海野の長男(山時聡真)と次男(増永成遥)は小学生。長男の同級生の少女(豊嶋花)は貧乏で靴も買えない。海野は足長おじさんになって少女に何くれとなく世話をする。しかし少女は去っていった。一方、辛子明太子は評判になり、西鉄ライオンズの神様と言われた稲尾投手までが買いに来た。


これを書いている時(2024年1月)、NHK朝ドラ「まんぷく」が再放送されていますが、チキンラメーン等を世に出した日清食品創業者を描いたもの。そういう意味ではよく似ているのですが、本作は開発の苦労話などは端折っている感じですので、サクセス・ストーリーとは思えません。

戦前、戦中の苦労話は2013年からの連続ドラマ版で散々描いたので、本作は補遺的なエピソードを連ねた感じがします。ドラマ版は見ていませんので、間違っていたらすみません。(U-NEXTで配信があるようですので、また見てみます)

博多華丸さん演じる主人公の息子目線の話がサイドストーリー的に少しだけ。小学生の兄を演じた山時聡真君のさわやかな演技が印象に残ります。弟役の増永成遥君は出番は少ないものの、子供っぽくないシニカルな一言居士風セリフも印象的でした。

しかし同級生の貧乏な少女を演じた豊嶋花さんがぜ〜んぶ持っていきました。彼女の泣きの表情と演技は天才子役の名にふさわしい素晴らしいものです。最初の泣きのシーンは私も少し感動。しかしですねぇ...彼女は出てくると必ず泣きのシーン。ここまでされると"あざとさ"感が出てきます。

貧乏でも、不幸でも、虐められても泣かない。きりっと唇をかんで耐える。ふてぶてしいくらいな目で。そんな少女が最後の最後に、顔をゆがめて涙を流す。

これなら観客の涙腺も破壊。彼女の泣きは切り札として最後に取っておかないと。ドラマの水戸黄門様は放送最後の5分くらいになると「この紋所が目に入らぬか」「ははぁ〜」となります。これが始まって5分で印籠を出し、その後も何回も何回も印籠を出すとシラけてしまうのと同じ。


ひもじくて万引きしてしまった同級生の英子。父(博多華丸)は優しく彼女に明太子を食べさせる。
(女の子には必要以上に優しいお父さん。貧乏な老人にも優しいのですけれど)


両親のいない英子。叔父に虐待を受けていた。その現場をみた父と長男は英子を庇った。
(長男が英子を襲っているのではありませんよ。念の為)


遠足に出かけた長男たち。英子が新品の靴とリュックで現れる。足長おじさんが寄付してくれたと。


次男はしっかり者。イタリア映画(鉄道員や自転車泥棒)に出てくるようなキャラクター
(演じた増永成遥君は、2023年の続編では長男役に。もっと活躍して欲しい。)


父に説得される長男。主人公である父と息子のシーンは意外に少ない。
(演じた山時聡真君。よくみれば大変なイケメン。なのに丸刈りも厭わず。プロですなぁ)


なんと!西鉄ライオンズの稲尾投手が中洲の店にやってきた。目を丸くして駆け寄る兄弟。
(サインをねだった。もちろん稲尾投手はこころよくサインしてくれた)



※後記
私が初めて辛子明太子を食べた時の思い出。父が博多土産で持って帰ってきたのですが、母は何とタラコと間違えて焼いてしまいました。美味しかったけれど、ちょっと辛いタラコの味。父は怒ったのですが、母はどこ吹く風で「当たったら怖いやん」チャンチャン。「少しのことにも、先達はあらまほしき事なり」(徒然草 第52段)





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