川っぺりムコリッタ (2021年)
寸評 |
荻上直子監督の独特のムードが漂う。どこかイタリア映画っぽい感じも。 |
少年の出番 |
出番は多くはないけれど、妙に印象に残る。 |
映画情報など |
2021年公開。BD/DVD発売中。 写真は北村光授君。 |
映画監督の荻上直子氏が自らの小説を映画化。コロナ禍で劇場公開が遅れたそうです。それで映画の製作年がサイトによっては2021年だったり、2022年だったり。私はWOWOWで鑑賞しました。
墓石セールスマン(吉岡秀隆)と息子(北村光授)。セールスのために黒い礼服で歩く。
(このシーンだけみると、この父子が主役に見えますが、違います)
刑務所を出所した山田(松山ケンイチ)は富山県の工場に就職し、ハイツ ムコリッタというアパートで暮し始めた。人との接触を避けたい山田だったが、厚かましい隣人(ムロツヨシ)に困る。そんな山田に音信不通だった父の訃報が届き、遺骨を引き取るよう連絡があった。無視したかったが、しぶしぶ遺骨を持ち帰った。
遺品の携帯電話の履歴から父が孤独だった事を知る。台風が去った翌日、山田は遺骨を砕いて粉にし、アパートの前の川に流す事にした。それを知ったアパートの大家(満島ひかり)はお葬式をしようと、アパートの住人を集めて、葬列を作り、川に散骨を始めた。
主人公は松山ケンイチさん演じる山田。幼少期の事は語られませんが明るい家庭ではなかったのでしょう。詐欺で服役。工場の斡旋で住み始めたのがハイツムコリッタ。大家は小学生の娘を持つシングルマザー。住民はクセの強い人間ばかり。特に隣の部屋の中年男。ムロツヨシさんが演じているのですが、役柄なのか本人そのものなのか(スミマセン)。
父親の遺骨。連絡があったのは自治体の担当者から。孤独死で葬儀も行われなかったのでしょう。しかし山田は父の記憶もなく迷惑にしか思えません。もちろんお墓を立てるお金なんてありませんし。遺骨をそのまま捨てると犯罪ですが、砕いて粉にすれば捨てれるとの事。(埋葬許可証などはよく判りません)
皮肉にも、住民の中に墓石セールスマンの男がいます。演じるのはなんと吉岡秀隆さん。主役クラスの俳優さんをチョイ役に使うとは。そしてセールスマンには小学生の息子がいます。人前では話が出来ない子。この息子がなかなかいいムードを持っていました。演じた北村光授君と、大家の娘役の松島羽那さんは、地元富山で選ばれた子役さん。
歩き疲れてしゃがみ込む父。同情を引くためなのか。息子を連れてセールス。
今日もだめだった。むなしく陽は暮れていく。母はどこにいるのか...
久し振りに契約が取れた。今日はお肉。すき焼き。そこへアパートの住民が勝手に押しかける。
左から大家の娘、セールスマンの息子、大家、厚かましい隣人(後ろ向き)、セールスマン、山田(主人公)
セールスマンの息子と大家の娘がヤギをつれて歩く。
(子どもらしいシーン。和みます。二人は地元富山の子。ヤギも地元の...)
橋の下には不法ゴミの捨て場所。そこにあった古い電話機。UFOから電話が来るらしい...
本当は誰と話したいのだろう。いないはずの母親だろうか...
ラストシーン。アパートの住人たちが山田の父の葬儀に参列。山田は川に遺骨を撒く。
少年と少女が奏でる楽器は、ゴミ捨て場で拾ったもの。フェリーニっぽいラスト。
後記
荻上直子監督といえば2004年の『バーバー吉野』。これが長編映画デビュー作だと思いますが、女性監督なのに少年の心情をよく把握して素晴らしい作品だと思ったものでした。その後は少年映画から手を引いたようですが、独特の荻上直子ワールドのような作品を次々と製作。久し振りに純粋な少年映画を作って欲しい。