白馬の伝説 (1993年)

製作年・国 1993年・アイルランド/イギリス
少年映画評価
お薦めポイント 白馬に乗った兄弟の旅
映画情報など ビデオ発売終了・廃盤


アイルランドの首都ダブリンのアパートで暮らす元ジプシーの父子。兄ティトー、弟オッシー、そして父のライリーの3人。母が亡くなってから、父は廃人同然になっており、幼い兄弟がしたたかに生活をリードしている。

ある日、祖父が野生の白馬を連れてきた。兄弟は白馬に一目惚れ。「ティアナノグ」と名前を付け、なんとアパートで飼い始めたのだ。白馬ティアナノグも、運命の絆で結ばれていたかのように兄弟と接する。暗かった2人に久し振りに幸せな時間が訪れた。

しかし幸せは長くは続かない。住民の通報で白馬は警察に連れて行かれ、しかも勝手に大富豪の馬主に売られてしまった。がっかりして落込む兄弟。父との溝もどんどん深まっていく。何ヶ月か経ったある日、町のテレビで競馬中継があり、優勝した白馬をみて「ティアナノグだ!」

兄弟はいても立ってもいられなくなり、競馬場から白馬を盗み出してしまった。しかし帰る場所はどこにもない。2人の大好きな西部劇のように、西へ西へとあてどもなく馬に乗って行くしかない。父のライリーは警察に追求されるが、息子達と白馬は見つからない。しかしこの事件で、ライリーに眠っていたジプシーの血が目覚めた。昔の仲間と連絡を取り、息子達を探しに向かった。

一方、兄弟はアイルランドの草原、森、町など旅を続ける。何回かピンチがあったが、その度に白馬ティアナログが救ってくれる。とうとうアイルランドの西の果ての海岸までやってきた。そこで父のライリーと再会。あの廃人ではなく、驚くほど逞しい父だった。父子が絆を取り戻したことを見届けると、白馬は海へ消えていった。

 所感など

これまでヨーロッパ映画として、フランス、イタリアを取り上げましたので、次はイギリスと行きたいところでしたが、少し飛ばしてアイルランドです。日本ではあまり話題になりませんでしたが、私は映画館で「白馬の伝説」をみて以来、いつかアイルランドへ旅行したいと強く印象に残った作品でした。(残念ながらまだです。いつか行けるかなあ..)

アイルランドの歌・民謡といえばダニー・ボーイですが、この映画でも歌われています。兄弟が物乞いをする場面で。幼い弟が弱々しいハスキーな声でダニーボーイを歌い(可哀相な子供と同情を集め)、兄がお金を集めます。「お前がもっとかすれた声で歌わないから今日はお金が少なかった」と兄が弟に文句を言う場面が印象に残っています。

しかし何と言ってもこの映画の見所は、白馬で逃亡を続けるロードムービーとなる後半。アイルランドの山や森を抜けて、何の希望もなく旅を続ける兄弟たち。一体どうなるんだろう、本当にひきつけられる作品でした。

逞しい兄を演じた当時12歳のルーアリー・コンロイ君、健気な弟を演じたチャーラン・フィッツジェラルド君、2人の演技が最高。フランス子役のような華やかさではなく、アイルランドの魂のような質実剛健な容姿が素晴らしい。

なお、白馬といえば、昨年(2008年)日本でリバイバル上映されたフランス短編映画『白い馬』と、どこか共通点も。やっぱり「少年と白馬」は絵になりますね。フランス映画の方は、少年を乗せたまま海へ消えていったのが、少し残酷といえば残酷かもしれません。

ビデオもDVDも現在は発売されていませんが、中古ショップ等を探せば、レンタル落ちのVHSビデオがあるかもしれませんので、ご覧になりたい方は探してみればと思います。




▼イーストエンド劇場へ戻る   ▼外国作品庫へ戻る