天才スピヴェット (2013年)
製作年・国 |
2013年・フランス/カナダ |
少年映画評価 |
A- |
お薦めポイント |
天才少年と玩具箱のようなロードムービー |
映画情報など |
2014年公開/DVD・BD発売中 写真は、主役のカイル・キャトレット君 |
監督はフランスのジャン・ピエール・ジュネ。アメリ(2001年)というヒット作品があります。残念ながら見ていませんが、予告編を見て心待ちにしていた作品です。鑑賞したのは平日、仕事が終わってからの上映でしたが、そこそこは観客が入っていました。3D作品とはいえ、こんな地味な作品なのに。ジュネ監督のファンの方かもしれません。いずれにせよ本年(2014年)最後の少年映画だろうと思います。
物語の主人公は、アメリカ西部の牧場で暮す、10歳の少年スピヴェット(カイル・キャトレット)。父はまるで西部開拓時代のカウボーイそのもの、母はマニアックな昆虫博士、美人の姉、そして二卵性双生児の弟(ジェイコブ・デイヴィーズ)がいたが、弟は銃の暴発事故で亡くなった。
スピヴェットは、母の血を継いだのか、10歳にして科学の超天才だった。しかし彼はどうしても劣等感と罪悪感を払拭することができない。それは弟の事だった。双子とはいえ、弟は身体が大きく、スポーツ万能で性格は明るく、カウボーイ気質の父にとって、一番お気に入りの息子だった。「弟ではなく、僕が死ぬ方がよかった」
そんなある日、米国スミソニアン協会に提出したスピヴェットの発明が、名誉あるベアード賞(架空の賞?)を受賞したので、ワシントンまで来るよう連絡が入った。協会担当者は、スピヴェットがたった10歳の少年とは知らず、大人だと思っている。
最初は断ったスピヴェットだが、一人でワシントンまで出かけることを決意する。家族には簡単なメモを残し、大きなトランクを持って家出のように。米大陸横断貨物列車に忍び込み、警備員や警官から逃走しながら、最後はヒッチハイクでワシントンへ到着する。そこで待っていたものは。
オモチャ箱のようなロードムービーはフランス風?
北西部モンタナ州から東海岸ワシントンまで、米大陸を横断する物語ですから、完全にアメリカン!なはずなのですが、フランス人監督の製作のせいか、妙にヨーロッパっぽく感じます。3D映像は面白いのですが、これがパリが舞台の「ヒューゴの不思議な発明」(2011年)と同じような感じ。
また、マニアックな主人公少年は『ものすごくうるさくて、ありえないほど近い』を彷彿させます。なにか「○○に似ている」みたいな感想ばかりで申し訳ありません。3Dにする必然性があったかは判りませんが、スピヴェットの発明である一種の永久機関っぽいメカニズムや、映画終りのエンドロールなどは楽しめますよ。
余談です。入口で配られた3D眼鏡ですが、眼鏡の上から装着するとガバガバで、ずり落ちるので、手で眼鏡を支えていないといけません。これに疲れて3D眼鏡を外したのですが、スクリーンの眩しい明るさにビックリ。3D眼鏡はサングラスなんですね。しばらく二重にボケたスクリーンを見ていましたが、こっちの方が楽かもしれません。昔のアナログ放送時代のUHF放送なんて、二重どころか五重くらいのゴーストでも、構わず見ていましたし。
「ひがみ」は洋の東西を問わず、物語の原点か
さて本作品主人公のスピヴェット少年は、両親、特に父親に対して、ひがみっぽい感情を持っている訳です。僕は愛されていない。弟の方が好きなんだ。邦画「あの空をおぼえてる」(2008年)では、兄が亡くなった妹に対して同じような感情を抱きます。もちろん、ひがむのは男だけではありません。どちらかといえば女性の方が多いかも。
ひがみなんて言うとネガティブな感じですが、これが成長のための原動力の一つである事は間違いありません。「僕は、私は、愛されていない」なので、なんとか注目して欲しい、と頑張ったり、挫折したりするところが、小説のネタになったりするのでしょうね。
もちろん、ひがみのあまり、性格が歪んでしまうことも多くありますので、特に子供に対しては、そんな感情を持たさないように育てることが望ましいには違いありません。でも、それでは人生は面白くなかったりして。
主役少年を演じたカイル・キャトレット君
本作品は、予告編と同時にメイキング映像もyoutubeにアップされており、短いのですが、ジュネ監督が、少年俳優カイル・キャトレット君にぞっこんであることが伝わってきます。6カ国語を話す事が出来る本当の天才少年で、演技も大人なみとか。父親がいないとの事で、ジュネ監督が父親のような態度で接しているのが印象的でした。
大陸横断列車に勝手に乗車。不安いっぱい
亡くなった弟(左)が現れて、勇気づけてくれる
広告用車両に隠れて警備員をごまかす
左右の男女は人形。少年も人形に。でも鼻水が