Ellos Volvieron (2015年)

製作年・国 2015・アルゼンチン
少年映画評価 B+
お薦めポイント 美しく、そしてどこか凄惨な風景と少年たち
映画情報など 国内未公開。Amazonで海外版BD/DVDあり。
写真はラウロ・ヴェロン君。


アルゼンチンの鬼才イヴァン・ノエル監督作品。2014年の「Limbo」に引続き、少年俳優ラウロ・ヴェロン君を主役に起用したホラー系の少年映画です。残念ながら同監督の作品は日本では殆ど公開されません。

日本の映画界はガラパゴス状態の邦画とハリウッド作品のみ。グローバル化という言葉がもはや陳腐化し「どこぞこファースト」の世界に戻りつつあるのは残念なこと。第三世界といわれる欧米以外の国の映画には本当に素晴らしい作品がたくさんあるというのに...

本作品は海外版DVDを入手。音声はスペイン語。字幕は英語とドイツ語(なぜドイツ語字幕があるのかは以下で)。中南米の映画は無修正なものが多いようです。

さてAmazonを見ると本作品のDVDを扱っているではありませんか。いやブルーレイまで。しかもブルーレイの方が安いのです。これが世界スタンダード。気になった方はぜひお買い求め下さい。

神隠しから戻ってきたルシオ。何も喋らず一人で泉で沐浴。何を考えているのか...

アルゼンチンのとある地方で3人の少年少女が行方不明。3日後に彼らは戻ってきた。ルシオ(ラウロ・ヴェロン)、ライオネル(フアン・イグナシオ・モリーナ)と少女サブリナの3人。少年2人は局部に傷。戻ってきた彼らは何も語らない。警察やマスコミ、そして学校の女性担任が調査するが何も判らない。

行方不明になったのは元ナチス親派が作った病院跡。ここは子供らの遊び場だった。地元の人間はこの場所を「恥」と呼び、邪悪なモノがいると噂している。やがて3人以外の子供たちも異様な言動を起こし始めた。担任教師の死を予告する絵を書いたり..

謎の男が警察へやってきた。3人は既に死んでいると告げる。殺したのはルシオと母を捨てた父なのか。やがて3人の子供の亡霊は(父と思われる)男を殺す。その瞬間3人の魂は解放されて楽園へ...

 とにかく難解

私のpoorな英語読解力のせいもありますが、イヴァン・ノエル監督作品は難しい。意味ありげな登場人物の関係がなかなか把握できず。字幕の英語もどこか癖があってなかなか頭に入ってきません。最後は細部を無視して映像によるインスピレーションを重視(何のこっちゃ)

以前にも書きましたが南米とナチスとの繋がり。有名なアイヒマン事件などナチス残党がかなり南米へ逃れたようです。実は戦前からナチス親派がいて、一方でそれを忌避する市民層も。本作のロケに使われたのは1920年代にナチス親派が作った本物の廃病院との事。

そこではおぞましい人体実験が行われていたとか。その被害者の霊が今もさまよっている...典型的な都市伝説ですね。それでもイヴァン・ノエル監督が作るとまるで美しい映像詞。

 ラウロ・ヴェロン君は監督のお気に入りか。

ちょっと爬虫類のようなインパクトのある容貌。それでいて色気を感じる不気味な美少年。ほとんどセリフはありませんが、強烈な印象が残ります。DVDにはメイキング映像があり、それを見るとごく普通の少年。しかし監督さんが彼を特別扱いしている様子もありありと。

その他の子役はオーディションよりも、監督自身がストリートで見つけてその場で親と交渉して決めた子が多いとか。(お亡くなりになった某大御所も「ユー、うちへ来ない?」などとスカウトしていたとか..)

撮影で一番困ったのは子供達を笑わないようにさせること。ほっておくと♪くだらない事も全部たの〜しくて収拾がつかなくなるお年頃。それを聞くと子供達は日本もアルゼンチンも同じなんだなあ...ひと安心。

行方不明から3日後。3人の少年少女は帰ってきた。
(なぜか3人とも全裸。とぼとぼと歩いて..)
ルシオの母が驚いて息子を抱きしめる。
ツーっと血が流れる。太腿の上の方から...


ルシオ。無表情で何も喋らない。
(行方不明になる前は普通の少年だったのに)
ライオネル。やはり何も話さない。
(画像省略しましたが、少女サブリナも同じ)


サッカーの後、シャワー室ではしゃぐ少年たち。
右のライオネルの前部を見た少年たちは息を飲んだ!
先生の質問に鋭い目線で答えるルシオ
(前作「Limbo」の吸血鬼役のような冷たい美少年)


やがて戻ってきた3人が行動を始めた。
(空撮やロングショットで美しい映像が続きます。)
ルシオに取り憑いた悪霊か?邪悪な表情に..
実の父(たぶん)の運転する車ごと谷底へ...


メイキングより。撮影の合間のオフショット。
(左はラウロ君。この角度は河島英人っぽい)
無理言って空撮用セスナに乗せて貰うラウロ君。
(ラウロの母親よりも監督の方が心配していたらしい)



※後記
前回も書きましたが、ラウロ・ヴェロン君の印象的な顔をみて、日本人で思いつくのがエダマエビーンズの河島英人君。ちょっと爬虫類っぽい目(ゴメンナサイ)が似ていて。彼にもイヴァン・ノエル監督みたいな人がついて、映画の主役に抜擢してくれたらなあ...




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