50年後のボクたちは (2016年)

製作年・国 2016年・ドイツ
少年映画評価
お薦めポイント クラスのはみ出し者(少年)二人のロードムービー
映画情報など 2017年日本公開
(写真は主役を演じたトリスタン・ゲーベル君)


東京に行ったついでで新宿シネカマリテで鑑賞しました。邦題「50年後のボクたちは」というのは、あまり映画の内容を表しているようには思えません。(そんな場面もあることはあるのですが。)

14歳の少年二人のロードムービー。前年(2015年)に作られたフランス映画「グッバイ、サマー」とほぼ同じプロットの作品ですが、ドイツとフランスのお国ぶりなのか、味わいは正反対。おしゃれなフランス、無骨なドイツ。大半の方はフランス贔屓でしょうが、私はドイツの本作の方が好きです。

マイクとチック。車は盗んできた、いや無断で借りてきただけと言い張るのはチック。

舞台はドイツ。14歳の少年マイク(トリスタン・ゲーベル)の母はアル中で治療中。父は秘書と不倫中。こんな環境で育ったためか、学校では変人と思われている。しかしそんなマイクにも憧れている女の子がいた。クラス1の美女タチアナ。でも彼女はマイクに目もかけてくれない。

そんな時、チック(アナンド・バトビレグ・チョローンバータル)が転校してきた。一目みただけで勘弁して欲しい容貌の少年。モヒカン刈りの大男、目の細いアジア系の陰険な顔(本人はロシア系と称している)。当然クラスの連中はチックと一切関係を持たない。マイクだってごめんだった。

夏休み。タチアナはクラスのみんなを豪華パーティに招待。チックとマイクを除いて。マイクの落胆は相当で家で寝込んでいると、なんとチックがオンボロ車で家にやってきた。「お前もパーティーに呼ばれてないんだろう、俺とドライブに行こうぜ」なんでお前なんかと...断りたかったが、マイクは強引に連れ出される。

こうして14歳少年の二人旅が始まった。チックの親戚がいるという南を目指して。警察に追われたり、チェコ人の少女を拾ったり、お約束の波乱万丈の出来事。最後はあっけなく終わるが。マイクにとって、チックはかけがえのない親友になっていた。

 中二病って。世界共通だったんですね。

14歳。少年としては微妙なお年頃。身長は伸び、体つきも男になってきます(可愛さは薄れて)。同時に今までは大きい存在だった両親や先生がちっぽけに見えてきて、俺はもっと偉大な存在なんだと思い始め、世の中の全てに反発したくなる気持ちも判ります。私もそうでしたし。

少年としての可愛さ、可憐さが減じてしまう14歳なんですが、結構映画の題材になるようです。最近の邦画でも「イカれてイル?」や「14の夜」などがズバリ14歳の少年がテーマといっていいと思います。

主役のマイクを演じたトリスタン・ゲーベル君。ロングヘアで可愛く見える角度もあるのですが、鼻の下には濃い産毛が目立ちます(剃ればいいのに)。ただ中二病?真っ盛りの生意気さで、最初はなかなか感情移入できなかったのですが、映画が進むにつれて愛おしくなってきます。冒頭の仏映画「グッバイ、サマー」の主役美少年よりも純情で可愛いいのです。

いやいやドライブに出たマイクだったが
マイクはチックのことを信頼し始める。
一方チックはマイクにある感情(下心)が...
チックが怪我をして運転できない。お前が運転しろ
マイクが恐る恐る運転するが、あっけない最後。

 社会的少数者への視線。外国人、ゲイ

本映画の原題は「Tschick」、転校生のチックのこと。演じたアナンド・バトビレグ・チョローンバータル君は、日本にもいるような不良系の顔。映画の中でも「アジア人め」と差別的な言葉も。正直言って最初は私も、彼の顔をみているとアジア人は劣等人種かも・・なんて自虐的な事を思ったりして。

しかしこのチック少年。私達観客はマイク少年と同じように、素晴らしい生涯の友人のように思えてくるのです。人種や民族なんてものよりも、やっぱり最後は人間として愛せるかどうかが大事なんです。
(チックは車も勝手に持ち出すなど、決して品行方正な少年ではありませんが)

もう一つ。このチック少年は後半のシーンでマイクに告白します。俺は女には興味がなくて、髪の長いお前に対してゲイ的な興味で近づいたんだ。(ここで終わったとけばいいのに)でも無理だった。

健全なる少年映画で、ゲイ(レズビアンも)の告白なんて。フランス映画なんかでは「寄宿舎」みたいにあったかもしれませんが、日本では珍しいと思います。外国人やLGBTなどの社会的少数者問題をかかえるドイツやヨーロッパとしては、多様性を認めようともがいているのだと思います。

蛇足ですが、主人公のマイクはゲイではなく、途中で出会ったチェコの少女と一線を越えようとしたのですが(結果は言いません)。色々書いてきましたが、仏映画が女性が書いたBL小説とすれば、本作は男性が書いたゲイ小説というところでしょうか。どちらが好きかはあなた次第。(えっそんなものどっちも嫌いだって)

もう一つ最後に。本作品のキーアイテムは、日本製の龍の刺繍の入ったスカジャン。マイクがAmazonで注文します。ドイツ人に人気なのでしょうか。

チェコの少女が旅に加わった(お邪魔虫)
チックがいない時、少女はマイクに近寄る
左が少女、右が少年マイク(逆じゃないよ)
少女が強引にマイクの唇を奪おうと...
(少年マイクの方が美しい)





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