約束の旅 (1987年)
初回放送・製作 |
1987年05月04日・NHK |
作品評価 |
B |
お薦めポイント |
1960年の大阪の街。家出した少年を探す家族... |
関連情報など |
NHKドラマスペシャル。2020年にNHK-BSで再放送。 (写真は長尾豪二郎君) |
新型コロナウィルス感染で揺れた2020年。新規ドラマ収録が出来ない期間もあり、各局では名作映画や過去のドラマが再放送されました。本作は全く知りませんでした。NHK-BSプレミアムでちらっと見たら、映画『プルシアンブルーの肖像』やTVドラマで活躍した長尾豪二郎君を発見。もう1回あった放送を録画して鑑賞しました。
弟を探してたどりついた長野。ここに牧場を作るのは儚い夢だった。
(おじさんが夢見た牧場(荒地)をみて思わず走り出した少年)
会社員の武彦の母が癌で入院。意識が薄れる母のベッドで武彦は少年時代の出来事を思い出す。15歳の武彦(長尾豪二郎)は呉に住んでいた。ある日、中1の弟(川上恭尚)が家出。友人らの証言から、弟は大阪の喫茶店でアルバイトをして旅費を稼ぎ、更にどこかへ行くと言っていたという。
両親と祖父そして武彦は大阪へ。大阪に住む親戚のおじさん(川谷拓三)が世話をしてくれた。道頓堀周辺の喫茶店を訪ね歩くが見つからない。その中で武彦は意外な事実を知る。家出の数日前、弟は祖父に旅に出ようと言っていた事。また弟とおじさんが文通を重ねていた事。
おじさんの夢は長野で牧場を持つ事。それを弟に書いていた。しかしおじさんは借金を重ねてヤクザに追われる身分。両親の仲も険悪になる。祖父だけは弟を信じていた。やがて長野で弟が保護された。武彦は自分ひとり家族を全く知らなかった事を感じながら...
下の子の方が可愛い...
本作にはキーマンが2人。1人は祖父。元海軍大佐だったが今では家のお荷物。軍人時代に収集した欧州各地のアンティーク時計とベートーベン第九のレコードが生甲斐。孫には優しかったが、武彦よりも弟が好きだった。弟も祖父が好き。父の転勤で祖父と別れる事への反発も家出の要因だった。
もう1人は大阪のおじさん。夢ばかり追いかけてまともな職業にもつかず独身のまま(寅さん風)。人柄はいいのだが結局は裏切ってしまう。そんなはぐれ者を弟は慕うようになった。長野に牧場を作るからお前も来ないか。そんな話に乗って家出したのが真相。
一方で主人公の武彦。それなりに勉強も出来て人間関係もそれなり。しかし弟と祖父やおじさんの関係のような深い人間の絆を築けない。僅か13歳の弟に人間力?で負けてしまったのか。それとも単に下の子の方が可愛いからなのでしょうか。
大阪の街に似合わない少年
本作の主役の一人を演じた長尾豪二郎君。人気ドラマ「うちの子にかぎって」などでは都会的なセンスのイケメン少年役。その印象が強すぎて1960年の薄汚い大阪の街を歩く事に違和感がありました。でも難役をそつなくこなしたのはさすがです。(ちなみに、家出した弟は最後の最後に数カット登場しただけ。)
父親は全国各地を転勤する役人。呉の前は横須賀や佐世保、そして次は舞鶴。何か旧海軍か港湾に関係する役所でしょうか。自分の事を小役人と卑下していますが、全国に転勤があるのは上級国家公務員でしょう。ただ小役人根性丸出しの嫌な人間でしたが、家出事件で少し目覚めたようです。
呉で暮す武彦。左は祖父
(長尾君の言葉は呉弁)
弟が家出。武彦に心当たりはない
(長尾君。さすがに少年期末期)
寝台車で大阪へ向かう4人
(武彦は上段ベッドへ)
大阪では知人の紹介で、なんと
中之島の中央公会堂を使わせて貰う
大阪で世話をしてくれるおじさん
(川谷拓三さんの演技が素晴らしい)
祖父と武彦は探し疲れて通天閣へ
(大阪といえば定番です)
通天閣から眺める夕日と大阪の街
(Always三丁目ですなぁ...)
長野の警察に保護された弟
(最後の最後にやっと登場)
弟の姿に涙が止まらない武彦
弟も兄の涙の意味を判ってくれた
※後記
本作品のキーワードはアシバッタ。何のことか判ります? 母やおじさんが「アシバッタの木を育てたかった...」と話します。ドラマ見終わってからネットで調べると、インドの菩提樹との事。ブッダがこの樹にもたれて悟りを開いたとか。捨ててはいけない夢のことでしょうか。