彼らが本気で編むときは、 (2017年)

少年映画評価 1点
作品総合評価 7点(作品自体はハイレベル)
少年の出番 10%(本当に救済が必要なのは少年なのに..)
コメント また一つ、女のズルさが見えてきた..
映画情報など 2017年公開/DVD・BD発売中
(写真は込江海翔君)


2017年キネマ旬報ベストテンにもランクイン。Yahoo映画や映画.comの一般レビューも平均4点以上を獲得している作品です。映画の出来自体は素晴らしい。監督は荻上直子さん。西川美和さん、呉美保さんなど40歳代の女性監督の才能は抜きん出ています。同世代の男性監督の情けないこと。

じゃあどうしてここ第4部に取り上げたのか。少年映画として、いや男性の性同一性障害者(俗にいうゲイ、オカマ)に対する認識があまりにも安易な気がするのです。あまりに女性の都合のいいように描かれているというか。もちろんこれは私感ですけれど。

故河島英五さんの代表曲「酒と泪と男と女」の最後の方に「また一つ女の方が偉く思えてきた、また一つ男のズルさが見えてきた」という歌詞があります。この映画を見ての感想は「また一つ女のズルさがみえてきた」。女の方が偉いとか男の方が偉いとかは関係ありません。

少年カイは悩んでいる。見つめる先は上級生のイケメン男子
■ストーリー

小学生の女の子トモは母と二人暮し。しかし母とは会話もない。ある日また男を作って家を出ていった。トモは叔父(桐谷健太)の家へ行く。これまでも何回かこんな事はあった。しかし今回は叔父の家には恋人のリンコ(生田斗真)がいた。リンコはトランスジェンダーで元は男だった。トモは戸惑いながらもリンコを受け入れる。

トモの同級生にカイ(込江海翔)という少年がいたが、彼も性同一性障害に悩んでおり、上級生の男子に密かな思いを抱いている。カイの母親は保守的でLGBTなんて受け入れる事が出来ない。そんな時、カイが書いた上級生への手紙が母に見つかってしまった。カイは自殺を図る...

一方、叔父とリンコはトモを実子のように愛し始めた。二人は結婚してトモを養女に迎えようとした矢先、トモの母が(男に捨てられて)戻ってきた。養女の件を切り出すと烈火のように怒るが、トモの涙をみて一旦は自分に母の資格がない事を悟る。しかしその夜トモは母の元に帰る事を決意した。

■なぜ「女のズルさ」を感じるのか

1回目みた時は本当に素晴らしい映画でした。主役である女の子トモの目線に立っていたからです。しかしレビューを書こうとsnap shotを撮りながら少年カイの視線で見返していると、色々とアラが見えてきました。女性のズルさが見えてきたのです。登場人物のズルさレベルを列挙すると...

ズルさレベル1
トモの母親。「私が幸せになっちゃいけないの」と自分優先で生きる女性(「誰も知らない」の母親と同じ)。カイの母親。ゲイやレズなんて一切認めず息子を支配。この二人はズルい訳ではなく単にわがままなだけだと思います。

ズルさレベル2
リンコの母親。リンコが中学生(当時はリンタロウ)の時から、息子を支えて女の子として扱ってきました。一見、理解ある人間のようですが、リンコが大人になってもまだ自分の庇護下に置いています。私はLGBTに理解があるのよ、という事を鼻にかけながら裏では打算的な胡散臭さを感じます。

ズルさレベル3
主人公のトモ。母親にネグレクトされた可哀想な女の子? いえいえ、なかなかしたたかな女のクソガキ(じゃりン子チエ風)。叔父やリンコ、母親の愛を天秤にかけながらもて遊んでいるようにすら思えます。それが同級生のカイに対する態度。

カイから「自分は男が好きだ」と打ち明けられ、悩んでいる事をトモは知っているはず。それが母親にバレて自殺未遂までしてしまった。カイに必要なのはゲイの先輩であるリンコの励まし。しかしトモはリンコに話しません。話したらリンコの想いがカイの方へ行ってしまうとでも思ったのでしょうか。嫌な奴。

カイは大人しい少年。バイオリンを習い将来の夢は芸大
でも自分は他の少年とは違う事に悩んでいた

■このテーマでは女性監督の限界かも

映画化にあたってゲイやオカマの事を荻上監督は調査されたとは思いますが、あまりに自分に都合のよいように曲解しているように感じるのです。私も偉そうな事はいえませんが、オカマと言われる知人は何人かいます。(私は絶対に同類ではありませんよ!)

一つが性行為のこと。男(トモの叔父)とリンコは同棲しているのに性的な臭いが一切しません。プラトニックな仲なんでしょうか。でもリンコは手術内容をトモにも説明します。自分の男根を加工して穴の中に入れたと(ウワーッすごい表現)。つまり女性として性行為ができるよう手術している訳です。

私の知人は水商売関係だからかもしれませんが、男に対する色情が強いのです。「ああ○○くわえたいわ」なんてのが口癖(しつこいですが私は対象外。女性にもオカマにもモテないブサイクな私)。女性に対しては利害関係のない友人として接する人が大半ですが、中には女性嫌いもいます。

本作のリンコは男や性行為に対して淡白。少年カイにも淡白。ところがクソ生意気なトモには愛情を注ぎます。またカイも上級生の男子が好きといいながら、クソ生意気なトモにばかりまとわりついて...非常に違和感。少女トモは荻上監督の分身であり、結局自分の視点でしか描けないのでしょう。

「生まれた年のコインを持ってるとお守りになるのよ」
リンコは言った。トモとカイは同じ年の生まれ。
「今は1枚しかないわ」さっとトモが取った(嫌な女)
トモに胸ぐらをつかまれ、恫喝されるカイ
リンコの事をお前がバラしたんだろう!(嫌な女)
(カイの目が切ない...)

■俳優さんについて

主人公の少女トモについて散々な事を書きましたが、それもこれも演じた柿原りんかさんの演技力の賜物です。彼女はきっと末恐ろしい女優さんになるだろうと思います。リンコ役の生田斗真さんも熱演でしたが、はっきり言ってイケメンではあっても女性には見えません。男根まで取ってしまった人は外見上は(美人とは限りませんが)女性にしか見えない方が多いだけに、やや無理があったかもしれません。

中学生のリンコ役を演じたのは高橋楓翔君。「イカれてイル?」以来の映画出演。EBiDANのMAGIC BOYSを辞めて俳優への道を歩み出したようです。出番がほんの僅かなのが残念ですが印象に残りました。生田斗真さんの面影もありましたし。あまり人気も出なかったラップをやめて正解。もう少し中学生時代のリンコを見たかった。でもJ事務所には勝てません。

そしてカイ役は込江海翔君。気の弱そうな少年役がピッタリ。でも出番も少なく、自殺未遂からその後どうなったのか、全く救われることなく放置されしまった。アナザーストーリーとしてカイの物語を作って欲しい。できれば男性監督で。

カイが想いを寄せるイケメン少年。でも女の子が...
(カイだってイケメンだよと言ってあげたい)
上級生男子への手紙を母に読まれてしまった。
この後バイオリンを弾き、睡眠薬自殺を...でも命は助かった
病院へきたトモがくれたのはあのコイン。(ケチ女)
(カイの苦悩は何も解決されてない...そのまま放置)

中学生時代のリンコを演じた高橋楓翔君
(生田斗真さんに似てなくもない。鷲鼻ではないけれど)
ブラジャーをつける中学生のリンコ
(高橋楓翔君のシャイな表情がナイス!)





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