僕だけがいない街 (2017年)

初回放送・製作 2017年12月15日・Netflixにて配信(全12話)
作品評価 B+
お薦めポイント 北海道苫小牧の冷たい空気と少年の眼差しが絶品。
関連情報など Netflixにて世界に配信。2021年関西テレビでも放送。
(写真は内川蓮生君)


人気漫画が原作でアニメ、実写映画に続いてドラマ化されたもの。本ドラマは米国に本部があるNetflixにより世界中に配信されています。映画版の『僕だけがいない街』も面白かったのですが、完成度は本ドラマの方が上です。

29歳のサトルがタイムリープした先は18年前の苫小牧。サトルは11歳だった。

売れない漫画家のサトル(古川雄輝)はリバイバルと呼ぶ現象に悩まされていた。何か悪い事件の予兆を感じると、それを回避できる時点までタイムリープ。事件の原因を排除するまで何度でも繰り返すしかない。ある日、北海道から上京してきた母が何者かに殺害され、サトルが犯人として逮捕された。その時、リバイバルが起きた。

戻ったのは18年前の世界。サトル(内川蓮生)は11歳。18年後の母の死の原因はあるのか。サトルは思い出した。連続児童誘拐事件が発生、同級生のカヨ(柿原りんか)、ヒロミ(城桧吏)も被害者になった事を。この誘拐事件を阻止する事が、母の死を防ぐに違いない。サトルはカヨに近づき、誘拐から守ろうと奔走する。

親友のケンヤ(小田陽翔)たちがサトルの力になってくれた。しかし1回目は失敗。カヨはいなくなった。2回目は阻止に成功するが、犯人によってサトルは意識不明の重体。昏睡状態から快復したのは15年後。大人になったケンヤたちの支援で犯人の記憶がよみがえる。犯人はサトルたちの教師だった...


小学生時代編は全て北海道の苫小牧でロケ。これが本当に美しい。何が美しい?と聞かれると空気が美しいとしか答えれません。冷たい緊張感にあふれた空気。その中で主人公のサトルが、大きな眼を震わせて走り回る。これを見ているだけでゾクゾクしてきます。

サトルの中身は29歳。演じるのは少年の内川蓮生君。本当に難しい演技ですが、彼に心底感情移入できました。ネタバレします。犯人である担任教師は表面上は誠実な人間。でも心の中は真っ暗。少年時代に兄を殺しているのです。兄の暴力と横暴に耐えかねてという事情はありましたが。

担任教師は殺害だけでなく、その罪を他人に着せる事に喜びを感じる変質者。一方のサトル、(中身は)29歳の大人のくせに担任教師の嘘を見抜けないのです。それどころか教師に好意まで。早くに父を亡くしたサトルは父性に飢えていたのでしょうか。

昏睡状態から覚めてからのエピソードが半分近くあるのですが、どうも緊張感を感じません。映像も苫小牧のような空気感がなくて。大人のサトルを演じた古川雄輝さんは嫌味のない好青年ですけれど、少し中だるみを感じてしまいました。原作に忠実との事ですので、役者さんのせいではありません。

ドラマ紹介記事で名前があがるのは古川雄輝さんばかり。感想レビューを読むと柿原りんかさんの演技力が素晴らしい、そればかり。Netflix公式サイトに掲載されているのも彼女の画像ばかり。でも本ドラマは内川蓮生君が全てだと私は思っています。もう少し扱いを大きくして欲しい。

身体は11歳。でも頭の中は29歳。
(名探偵コナンよりも大変)
元の世界では誘拐されてしまった少女カヨ。
彼女を守ることが、僕のミッションだ。


カヨは家で母親から虐待を受けている。
どうやって守ろうか。
1回目は失敗。また事件の前の世界に戻った。
今度はカヨを連れ出し、廃バスの中に身を隠させた。


夢を見て手を伸ばす。何をつかもうとしていたのか。
(内川蓮生君は時々、別人のような表情に)
担任教師の車に乗るサトル。信じて疑わない。
(担任教師に父の面影を見ていたのだろうか)


担任教師が本性を現した。もう遅かった。
サトルの表情。驚き、怒り、そして悲しみ...
この世界で必死にやってきた事は全て、
無駄だったのか。サトルはこのまま...


ドラマではサトルの親友も活躍。左からヒロミ(城桧吏)、ケンヤ(小田陽翔)、そしてサトル(内川蓮生)
(ケンヤのセリフがややぎこちない。でも世界配信では字幕か吹替えなので影響なし。)


※後記
ドラマの監督さんへのインタビュー記事で、Netflixからの注文について語っている部分が興味深いです。キャストについては監督に権限。ドラマに最適な役者を選ぶようにとの事。日本で数字を持つビッグネームにとらわれる必要はない。どうせ世界では関係ないのだから。
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