怪物 (2023年)

少年映画評価
作品総合評価 A+
少年の出番 70%ほど(黒川君は90%)
お薦めポイント 同じ事案を別の視点で3回描く。最後は少年2人に涙。
映画情報など 2023年公開。BD/DVD等未発売
(写真はカンヌでの柊木陽太君と黒川想矢君)


2023年のカンヌ国際映画祭で脚本賞(坂元祐二さん)とクィア・パルム賞を受賞。パルムドールは逃しましたが、素晴らしい評価を得ました。特にクィア・パルム賞の存在は知りませんでしたが、LGBTなど多様性を描いて優れた作品に贈られる賞とのことです。

2023年の6月2日から国内公開。しかし毎回の事ながら是枝監督作品にはアンチの方が結構おられ、ヘイトまがいのレビューを書かれています。そんな事もあり、あまり予習もせず、期待もせず、映画館で鑑賞。かなりの衝撃を受けました。ただ頭が整理出来ていませんので、このレビューは速報とし、また後日追記致します。

列車の廃線跡のある森。ミナトとヨリの心が解放できる場所だった。(パンフレットより)

長野県の湖畔の町。母(安藤サクラ)は息子のミナト(黒川想矢)の様子がおかしいのに気が付く。夜中に家を出たり、靴を無くしたり、怪我をしたり。問い詰めると、先生(永山瑛太)に暴行と暴言を吐かれたと言う。母は小学校に抗議。先生も校長も曖昧な言い訳を繰り返す。母は更に追求。やがて先生は公式に謝罪し辞職。

時間が遡る。今度は先生の目線で進む。クラスのヨリ(柊木陽太)が苛められているようだが、明確な証拠をつかめない。ある日、暴れているミナトと接触して顔を傷つけてしまう。なぜ暴れていたのか。そうこうしているうちにミナトの母から抗議を受ける。他の先生や校長は事勿れを徹底。結局、先生が責任を取る事になった。

また時間が戻る。今度は2人の少年ミナトとヨリの目線。これが真相なのでしょうか。非常に重要なシークエンス。しかしここでは書きません。是非映画をみて下さい。


同じ出来事を視点を変えて3回繰り返します。なので飽きてしまうかと思ったら、断崖絶壁の小道を歩いているような緊張感が続きました。これがカンヌをうならせた坂元氏の脚本力。ただ1回見ただけでは判らない箇所が多々あります。でもあまりの集中感に疲れてしまって、すぐに2度目は見れません。

上記のストーリーでは3回目のシークエンスを書きませんでした。この3回目が素晴らしい少年映画になっています。まるでフランス映画の『悲しみの天使』(1965)のような二人。常に死の色がまとわりついているようで、一方では無限の希望も感じるラスト。

登場人物の数から言えば群像劇と言ってもいいかもしれません。特に印象に残ったのは校長先生を演じた田中裕子さん。彼女の能面のような演技は怪物でしたが、美味しい所を持って行ったのはさすがに名女優。もちろん安藤サクラさんと永山瑛太さんの熱演は言うまでもありません。

しかし何と言っても黒川想矢君と柊木陽太君の二人。群像劇とはいえ黒川君は初めから出ずっぱり。既に思春期入りした横顔には色気が漂います。色々なレポートを読んでいると、演じているうちに自分とミナトとの区別がつかなくなって、撮影が終わってからも悩んでいたとか。本当に真面目そのものの少年。

一方の柊木陽太君。すでにTVドラマでは人気子役。小悪魔ぶりは天性かもしれません。とにかく可愛いくて生意気。仏映画『悲しみの天使』のディディエ・オードパン君にも負けていません。2人の事を書き始めたら止まりませんのでこのくらいに。

ミナト役を演じた黒川想矢君。
(NHK「剣樹抄」での主役も印象に残ります)
ヨリ役を演じた柊木陽太君。
(不思議ちゃんですね。大昔の六浦誠君に似ています)


廃線に残された小さな列車の中で。
(ここはオアシス。鉄道ファンも羨みそう...)
列車の中でゲームに興じる2人。
(でもこの列車は本物でなくセットだそうです)


カンヌでの上映終了後。ポーズを取る2人。
(実はこの2人、ケンカもしたそうです...)
是枝監督を交えてポーズをとる。
(こんな写真を出すと、また監督に変な疑惑が...)



※後記
久し振りに映画のパンフレットを買いました。990円と高いので迷いましたが、中身は満足できる内容でした。ホームページをそのまま印刷したようなパンフレットが横行するなかで、本作品のパンフレットの充実ぶりは素晴らしい。これぞパンフレットだと思います。A5サイズとコンパクトなのもいい。

ただ字が小さ過ぎるのが難。最近あまり見ないTVCMの○○○ルーペがいるかも。そう言えばあのCMに出演しておられたのは舘ひろしさん。本作主演の黒川想矢君は舘ひろしさんの事務所に所属。何か関係が...ある訳ないか。





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