虹色ほたる 永遠の夏休み (2012年)

少年映画評価 少年アニメ映画としては満点。絵がもう少し精緻だったら1部昇格。
作品総合評価 少年と男性目線のノスタルジーとしては完成品。
少年の出番 ほぼ100%。(少年の声は少年が担当)
お薦めポイント ホタルが群れ飛ぶ幻想的な風景。
映画情報など 2012年国内公開。DVD発売中。小説、コミックもあり。
写真は主人公のユウタ(声は武井証君)


原作小説は文庫本で読んでおりました。アニメ映画版は知っていましたが、小説で十分満足していましたので、わざわざDVDで見る必要もないかと思ってスルー。しかしAmazon Primeで無料(会費は必要)で配信されていたものを鑑賞。これは傑作。もっと早く見ていればと後悔。少年たちの声も少年が担当していて、これが素晴らしいのです。

ホタルが乱舞する山の中の池。ユウタ、ケンゾー、サエコ。
(オリジナルの映像は暗いので、静止画は明るく加工しています。以下の画像も含めて)

夏休み。小6のユウタ(声:武井証)はダム湖のほとりでカブトムシ採集。ここは亡き父と一緒に来た場所。そこに不思議な老人がいて雨が降るから帰れと言う。ユウタは突然の鉄砲水に流され、気が付くとサエコ(声:木村彩由実)という少女がユウタを呼んでいる。ユウタはサエコの従兄で夏休みに遊びに設定に。訳が判らないまま家へ。サエコの祖母「遅かったねえ。早くあがれ」

新聞の日付は1977年。30年以上も昔だ。その夜、あの不思議な老人が現れ、手違いでお前はここに来た。元の時間に戻してやるが、2、3週間はここで暮らせ。ユウタは納得できないが仕方がない。隣の家には同い年のケンゾー(声:新田海統)がいて、ユウタにカブトムシやホタルを見せてくれる。あっという間に親友になった。

神主は子供たちを集めて灯籠作りを命じた。間もなくダムに沈む村への祈りを込めて。最後の花火大会。そして夏祭り。ユウタはサエコの秘密を知った。サエコもタイムスリップで来たのだ。しかしサエコは先に死んだ兄の元へ行く。それはいけない。ユウタはサエコのために虹色ホタルを探す。やがてユウタも元の時間に戻る時が来た...


ゲーム「ぼくのなつやすみ」のような起伏のない淡々とした作品ではなく、結構エピソードがてんこもり。上のストーリーでは十分に書いていませんので、ぜひ映画かマンガか小説を見て下さい。日本の夏の原風景のような幻想的なシーンに酔いますよ。

主人公のユウタ。父に連れていって貰ったカブトムシの林が忘れられず、小学生最後の夏休みにバスに乗って一人でやってきた。父はバイクに乗っていて交通事故で亡くなった。山の中で出会った老人は、なにかの神様だったのでしょう。(神様でも)喉が渇いていたのでユウタに水(ペットボトル)を貰った。

そして村がダムに沈む直前にタイムスリップ。しかし神様もよく配慮していて、ユウタはサエコという少女の従兄の設定に村人たちは何の疑いも抱きません。神様もすぐにやってきて、あの時間ちょうどに帰してやるから心配するな。ただ手続き?に時間がかかるので、夏祭りまでここで暮すようにとの事。

手続きなんて言っていますが、ユウタに体験させる事が目的なんでしょう。ユウタはしばらく昭和少年に。とにかく隣の家のケンゾー。これが本当にいいヤツ。ユウタを連れて村や川、山を走り回ります。1977年ですから、子供たちはみんなランニングシャツに短い半ズボン。

サエコ。ユウタより3歳下。ある日熱を出して倒れるのですが、その時みたサエコの幻想をユウタも見ることに。サエコが大好きだった兄と歩いていると、バイクが脇を通過。その直後、センターラインオーバーの車がバイクと衝突。バイクは宙を飛び兄を巻き込んでしまった。そしてなんとバイクの運転手はユウタの父。

後半。最後の夏祭りに向かってクライマックスに。過去に何度も村人を救ってきたという虹色に光るホタル。ユウタはサエコを連れてホタルを探します。どうなったのかは書きません。そのままサエコは消えてしまいました。翌朝、祖母もケンゾーもサエコの存在は記憶から消えてしまっています。ああ、これ以上は書きません。

ユウタの声はあの名子役の武井証君。『ぼくとママの黄色い自転車』『BALLAD名もなき恋のうた』など映画主演作品もあります。本作の頃はもう中学生ですが、少年の声は健在。それどころかプロの声優さんも顔負けの上手さ。この声を残した事は本当に素晴らしいの一言です。

ケンゾーの声は新田海統君。あまり情報はありませんが、当時中学生くらいではと思います。素朴な田舎の少年の声を好演。最後のユウタとのお別れシーンは、映画『少年時代』にも劣らない感動です。主題歌はユーミン。

かつて日本のアニメ映画(漫画映画)リードした東映が全力を注いだ作品との事ですが、それほど話題にもならず、興行的にも芳しくなったのが残念です。ジブリ作品のように少女目線にするか、コナンやワンピースなど漫画原作にしないとダメなんでしょう。


ユウタは山の中で不思議な老人に会った。
水が欲しいと言われ、ペットボトルを渡した。
鉄砲水に流され、気づいた時は別次元?にいた。
ダムに沈んだはずの村の美しさに驚く。


その夜、不思議な老人が来てユウタに説明。
今すぐ帰してよ。(ユウタの全裸をサエコに...)
隣の家のケンゾーは同い年。本当にイイ奴だ。
ユウタを連れて美しい村の中を駆け回る。


ケンゾーは畑のトマトをユウタにくれた。
(絵はリアルでないのですが、妙にリアルな部分も...)
クラスの少女は明日引越し。ケンゾーに告白。
(意外にケンゾーはモテるのです)


村最後の夏祭り。ユウタはサエコを連れてあの池へ。
虹色のホタルは見つかったのか。サエコは消えた。
ユウタも戻る日が来た。祖母の弁当に涙。
しかし祖母はサエコの事を忘れてしまっている。


ユウタから貰った帽子をかぶるケンゾー
お別れの時が来た。手を離したくない...
トラックの荷台から手を振るユウタ。
ケンゾーはいつまでも追いかけてくる。


元の世界に戻って約10年後。ユウタはケンゾーともサエコとも再会します。神様はタイムスリップした時間の記憶を3人から消したはずなのに、3人は何か感じてしまうのです。




※後記
やはり男性の側から描いた作品でしょう。女の子のサエコは可憐で可愛く大人しい存在。男性から見た女の子のキャラクターに違いありません。ちょうど『火垂るの墓』の節子の印象。同じアニメ映画でも『雨を告げる漂流団地』に出てくるヒロインのように自己主張を強く出し、時には騒々しい女の子とは違います。

まず無理だと思いますが、是非とも実写化して欲しい作品。実写化された場合、たぶんサエコはもっと活発な女の子で、クラスメートには騒々しい少女たちも登場するかもしれません。そして1977年なのにハーフパンツの少年ばかりになるかもしれません。それでも構いません。実写が見たい。





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