君がいる、いた、そんな時。 (2019年)

少年映画評価 4点(主演した「本当の少年」には申し訳ありません)
作品総合評価 5点(地方映画としては上出来の部類)
少年の出番 85%(役柄上は100% でも演じているのは...)
コメント 男の子を女の子が演じる必然性が全く判らない!
映画情報など 2020年公開/BD/DVD等未発売
(写真は主役のマサマヨール忠君。)


広島県呉市の地元映画。毎年多くの地方映画が制作されますが全国公開されるのはほんの一握り。本作は10館たらずとはいえ全国公開。私はテアトル梅田で鑑賞。特に出色の出来でもなかったのですが、主役2人のうちブサカワ系の少年が非常に良くて、この少年しか印象に残りませんでした。

ところがですね!帰宅して600円のパンフを読むと、この少年は女の子が演じていたのです。ボーイッシュな女の子ではなく男の子として。映画チラシには女の子なんて一切触れず(坂本いろはという名前だけ)。どうしてこんなだまし討ちみたいな事をするのでしょう...

パンフレットの監督談話を読むと、オーディションで女の子と判って一目惚れ。この子しかいないと強引に決めたとの事。撮影現場でも彼女が中心。彼女には本格的に役者をやって欲しいと。完全にロリコン監督ですなぁ。皆様もご覧になられる時はご留意の上で。

左からマサヤ、山武謳カ、カヤマ。図書室が2人のオアシスだった。
■ストーリー

呉市の小学生マサヤ(マサマヨール忠)はフィリピン人の母を持つハーフ。クラスでは悪質なイジメや差別発言を受けていたが一切反撃しない。放送部のカヤマ(坂本いろは)はハイテンションで校内放送を行うが全員から無視。話しかける者もいない。そんなカヤマがマサヤをスカウト。一緒に放送しようよ。

2人にとってオアシスが図書室。司書の山武謳カがマドンナ。マサヤは小説を書いて見てもらっていた。でも先生には秘密があった。その秘密のせいで先生は休職。先生を励まそうと2人は深夜の学校に忍び込み、校外に向けて放送を始めた...

■主役3人のかかえる問題...

映画はマサヤの目線で進みます。デブの糞ガキと取り巻き連中にフィリピンへ帰れなど暴言と暴力の数々。母親はフィリピンパブのホステス。客にお金を投げられ、拾え!ピーナのくせになめんなよ!子供が見たらどう思うのでしょう。救いは日本人の父親が立派な人格者であること。

司書の山武謳カは不倫相手の子供を授かったが子供はすぐに死亡。そのショックで精神科に通院しながら司書の仕事。マサヤたちには優しくて聡明な女性。でも赤ん坊の死を受け入れらない。ほら、ここにいるでしょ。どうして見えないの?

カヤマは詳細には描かれませんが家では虐待されているようです。TVを見せて貰えずラジオだけが友だち。それでDJが夢。この辺りはキュンときたのです。本当に少年が演じてくれればなあ。

3人のうち一番大きいのがマサヤへの差別問題。もちろん映画で解決するような簡単な問題ではありません。でも映画を見た人に何かきっかけのようなものを提示して欲しい。本作は全てが中途半端。このままでは却ってフィリピンへの差別を助長してしまう恐れすら。

■じゃあどう作ればよかったのか....

主人公のマサヤ。彼の思いや葛藤をもっともっと深く描かないと。差別された苦しみ、母の国をバカにされた悔しさ、その中で自分はこう生きていくんだ!そんな熱い少年にして欲しかった。

本作品のマサヤは常にクール。言いかえれば他人事みたい。もちろん演技歴の全く無い子役ですから限界はあるでしょう。ただこれは監督の問題。監督が子役に全身全霊を傾ければ、どんな下手な子役でも光る部分が出てくるはず。それが見えませんでした。マサヤには。

少女が演じたカヤマには光る部分が確実に見えました。これは監督の熱意の結果でしょう。一方のマサヤ。監督談話では厳しい指導をしたそうですが、少女に対する程の愛情がなかったのでは。これは映画「HINOKIO」と全く同じ構図。残念ですが、この監督さんは少年映画には向いていないと思われます。


糞ガキから差別や蔑視されるマサヤ
(じっと耐えるだけ。日本人のガキの方が醜い...)
あるビルの屋上で偶然カヤマと会った
お互いハミ出し者同志だが...


どうみてもブサカワ系の男の子にしかみ見えない...
(広島にはこのタイプの少年子役はいなかったの?)
しぶしぶ放送部につきあったマサヤ
カヤマはEBiDANの山下夕越君にも似ている...
(夕越君の方が美少年でしたけれど...知らない?)



※後記
少年にしか見えないなら少年だと思っていいのでは。演じているのが女の子だって関係ない。ジェンダーレスの時代だし...そんな風に思おうとしたのですが、こればかりは無理でした。心が狭いのかな。それを認めてしまうと私のアイデンティティが崩壊しそうで...

※後記(その2)
ロケをした呉市の小学校。円形の建物はひょっとすると映画「花のズッコケ児童会長」でも見たような。1991年の作品ですからもう30年近く前。さすがに同じものではないのかも。




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