昨年2016年は久し振りに豊作といっていいほど少年映画がありましたが、2017年はその反動なのかほぼ壊滅状態に戻りました。もうメジャー作品は皆無でミニシアターや自主上映作品にしかありません。一方、海外作品は相変わらずコンスタントに少年映画は作られていますが、日本での配給が減り、もうここでは取り上げないことにしています。
なお2017年の対象は、映画の製作年度ではなく2017年に公開、発売、放送され、管理人が鑑賞した作品としております。ですのでキネマ旬報ベストテン等とは異なる内容になっている場合があります。
リトル京太の冒険 | 防災頭巾を取れなくなった少年(東北震災の傷跡がここにも) |
1.リトル京太の冒険 | 頭巾少年と外国人教師の奇妙な関係。→ review |
2.さようなら、ごくろうさん | 深夜の学校で用務員と少年が見たものは→ review |
3.子どものおもちゃ | 子どものガンアクションと侮るなかれ。→ review |
4.天秤をゆらす。 | 時間のトンネルを超えて少年時代の自分と遭遇。→ review |
5.鬼面の涙 | 鬼の面が取れなくなった少年が流した涙。→ review |
土屋 楓 (14) | 10歳から4年間かけてリトル京太を演じました。 |
りょうた (11) | 「さようなら、ごくろうさん」で好演。(本名や年齢など詳細は判りません) |
神保 舜莉紋 (11) | 「子どものおもちゃ」での熱演。(年齢は推定です) |
横路 周東 (11) | 「子どものおもちゃ」での子供とは思えぬニヒルな演技。(年齢は推定です) |
三谷 麟太郎 (11) | 「天秤をゆらす。」での熱演。(年齢は推定です) |
石野 湘太 (11) | 「天秤をゆらす。」での熱演。(年齢は推定です) |
錦織 大護 (11) | 「鬼面の涙」での熱演。たった10分足らずの作品ですが印象に残りました。 |
込江 海翔 (13) | 少年映画ではありませんが「彼らが本気で編むときは、」での存在感。 |
内川 蓮生 (13) | ※追加。「ブルーハーツが聴こえる」の「少年の詩」では堂々の主役。 |
福崎 那由多 (16) | 「光」(大森立嗣監督)では狂気的、そしてエロチシズムさえ感じる少年を熱演。 |
2017年は、何とか少年映画の範疇に入るものをかき集めてベスト5として発表しましたが、実質的には商業用映画として公開された作品は1本だけでした。迷うも何も本作「リトル京太の冒険」しかありませんので、これで決まりです。
毎回書いていますが、以前はある程度のレベルに達する作品が無い場合は「該当作品なし」という選択肢もありました。今は原則的に必ず選ぶことにしています。もちろんその年に少年映画が1本も無い場合は仕方ありません。ですので年によっては「なぜこれが..?」と思われる作品が大賞となっていますが、それはそれで構わないと考えています。
「リトル京太の冒険」も僅かなミニシアターで細々と公開された作品で、その存在さえ知らない方が大半だと思います。また製作経費がなくてブルーレイやDVD化もされない可能性が大です。その代り近年では経費のかからないネット配信で公開されるケースもありますので、情報収集を欠かさないようにしたいものです。
■2017年少年映画ベスト5について商業映画として公開されたもは1本、その他に、ぴあフィルムフェスティバル上映会、レンタルDVD、スカパー放送などから何とかかき集めると合計5本。これが全てで次点もありません。(もしかすると気づいていない作品もあるかもしれません。ご指摘頂ければ幸いです。)
1位は前述の通り「リトル京太の冒険」、2位と3位は第39回PFF(ぴあフィルムフェスティバル)のコンペティション部門に選出された作品です。色々考えました結果、2位は「さようなら、ごくろうさん」としました。実は3位の作品の方が世間的には評価が高いのですが、少年俳優は判りやすい形で登場していましたので、こちらを選びました。
3位は同じくPFFの「子どものおもちゃ」。こちらは何とPFFの準グランプリに輝く佳作です。少年俳優たちのミニ群像劇といっていい作品ですが、少年一人一人の描き方にはやや物足りなさを感じたために3位にしました。出ている少年俳優の氏名すら判りません。準グランプリを機に監督さんがメジャーになって本格的な少年映画を作ってくれる事を心から希望します。
4位の「天秤をゆらす。」レンタルのツタヤで偶然見つけた作品。本当に存在すら知らなかったのですが、きっと少年映画の神様?がレンタル棚の本作品に導いてくれたのに違いありません。作品自体はツッコミ所もありますが、よく出来ていたと思います。
5位の「鬼面の涙」はスカパーのチャンネルNECOで放送された「しまね映画塾」で製作された短編映画の一つ。島根県は映画による文化や情報発信に力を入れているとの事で、本当に心強い限りです。他にも地方振興に映画を手段として用いている地方がたくさんあります。そういう作品の中から日本映画の大きな賞を受賞するような作品が生まれる日も遠くはないのでは。
■2017年個人賞について
【最優秀少年俳優賞は土屋楓君】
震災後、防災頭巾を片時も外せなくなった少年。監督の大川五月さんに10歳の時に見出され、それから足掛け4年に渡って京太を演じました。10歳の時の映像と14歳の映像が混じりますが、可愛さは持続。でも最後のシーンで頭巾を取った時、やはり思春期の少年の顔でした。他の作品にも出て欲しかった少年俳優です。
【優秀少年俳優賞は5名】
「さようなら、ごくろうさん」のりょうた君は本当に少年らしい素直な演技で好感が持てました。本名などの詳細は不明ですがネットで検索すると、あの元子役の坂上忍さんの事務所に所属ではと思われます。坂上さん本人はあまり感心しないのですが、子役を育てるという点では筋が通っていると思います。
「天秤をゆらす。」に出演した三谷麟太郎君と石野湘太君。最初は二人ともあまり性格のいい少年(役)ではなかったのですが、最後は少しホロっとさせてくれるくらいの熱演でした。彼らも詳細は殆ど判りません。
少年映画ではありませんが、映画「彼らが本気で編むときは、」で性同一性障害に悩む少年カイ役を演じた込江海翔君の熱演が印象に残ります。実は込江君、本当に数多くの映画に出演していながら主演作はなく本当に残念に思っています。何かの形で表彰してあげようとずっと思っていました。
PFF準グランプリに輝く「子どものおもちゃ」ですが、演じた少年俳優が判りません。エンドロールには俳優名が出てくるのですが、誰がどの役をやったのか、ネットで検索しても不明です。ノースエンド先生がいつも指摘されているように日本映画のキャストは役名を書かず、本当に不親切です。
※追記
「子どものおもちゃ」が2019年1月にスカパーで放送されました。その番組の冒頭でキャストのテロップが流れて2人の俳優名が判明しました。神保 舜莉紋君と横路 周東君です。2人とも難しい読みだなあ...
※追記 その2
さらにDVDで鑑賞したオムニバス映画「ブルーハーツが聴こえる」の「少年の唄」で内川蓮生が熱演しているのを、2019年になって知りました。お詫びしてここに追加します。
【特別賞は福崎那由多さん】
大森立嗣監督の「光」は作品自体が衝撃的なものでした。福崎さんは井浦新さん演じる主人公の少年時代役ですが、結構出番もあり、井浦新さんよりも強烈な印象(エロティシズムのようなものも)を受けました。少年が殺人を犯す、それもよりによってあの可愛かった福崎那由多君が...。
昨年ここで同じ表彰をした萩原利久さんもそうですが、俳優として一皮むけて、大きく飛躍してくれる予感も持ちました。是非いい作品にめぐり合って欲しいものです。
■その他雑感。毎年恒例ですが「キネマ旬報」の2017年の映画を総括号を読みました。新人男優賞は山田涼介さん。その投票結果の詳細は今年も希望の持てない内容でした。J事務所に忖度?しているのか、山田さんとか中島裕翔さんに票が集まるばかり。(私は彼らの出演した映画を見ていませんので、その妥当性については言及できません。素晴らしい演技だったのだろうと思います)
少年俳優としては、私のサイトでは昨年度作品「14の夜」の犬飼直紀君に2票、同じく昨年度作品「Innocent15」の萩原利久さんに1票だけ。そして該当なしが12票も。昨年は7票でしたたので大幅増。ちなみに新人女優賞の該当なしは3票だけ。
男優新人賞に興味がない審査員がスカタンなのか、男優新人をプロモートしない映画製作者が情けないのか。次代を担うフレッシュな新人が出てこないで映画界が繁栄する訳がありません。日本映画はこのままではオリンピックのメダル数と同じで中国、韓国にも大きく劣るばかりでは...なんて考えてしまいます。来年はフレッシュな新人男優が活躍しますように。