一銭店屋の帰り道 (2005年)

少年映画評価 7点
作品総合評価 5点
少年の出番 100%(主役)
お薦めポイント 14分に凝縮された兄弟の思い出
映画情報など 2005年製作/DVD発売済


■「監督の卵」たちの、みずみずしい作品集より

ニューシネマワークショップという、映画専門学校のような組織が開催するムービーズ・ハイ(Movies-High)の6回目のイベントを収録したDVDを入手しました。7本のショートフィルムが収録されたDVDの中に、少年映画として光る1本がありました。全く偶然に見つけた作品ですが、たった14分、しかも資金など、色々と制約がある中で、本当によくまとまっていました。

■ストーリー

まだ幼い小学生の弟は、友達と一銭店屋(駄菓子屋)に寄るのが楽しみ。兄は学校では苛められっ子。しかし家では兄貴風を吹かせ、弟には威張っているので、弟はそんな兄を軽蔑し「苛められっ子のくせに」と反抗している。

弟が友人が一銭店屋の親父のインチキ見つけると、親父は口止めしながら、一等商品(スーパーボール)をくれた。明日の朝早く二人で秘密基地に隠す事にした。一人で帰る道で、不気味な老婆が首を吊ろうとしている。目が合った老婆は去っていくが、木には輪になったロープが。弟は慌てて家に帰った。

翌日、約束通り、弟は暗いうちにパジャマのままで家を出た。首吊りババアを気にしながらも秘密基地へ行く。でも、待っても待っても友達はやって来ない。仕方なくトボトボと帰り道につく。そこへザザザと足音が。首吊りババアが恐ろしい形相で、弟へ向かって走ってくるのだ!

恐怖に駆られて逃げる弟、どこまでも、どこまでも追ってくる。一銭店屋の前まで逃げてきて箱のカゲに隠れる。しかしババアに見つかり、万事休す!その時「何やってるんだ、みんなお前がいなくなって探していたんだぞ」声をかけたのは兄だった。

ババアの姿はどこにもない。ようやく安心する弟。しかし兄に対して反感が生まれてきた。「別に探して貰わなくっていいんだよ」黙って弟を見る兄。兄もパジャマのままで、大切にしていた靴は泥だらけ。必死で探してくれていたんだ。弟も黙ってしまった。「帰ろう」「うん」弟は自然に兄と手をつなぎ、家へ帰るのだった。

■演じた子役さん

弟を演じたのが、中村理央くんでした。学生映画なので経費節減のため、知り合いのお子さんに出演して貰ったのかな、と思いましたが、きちんとした子役さんのようです。この作品の時点では、まだ舌が回らないセリフもあったりして、素人っぽかったのですが、それがこの作品によく合って、好印象でした。

プロフィールを調べると、その後はフジTVの「ほんとにあった怖い話」、映画「口裂け女」「神童」などに出演されているようです。豊作と噂される96年世代の子役さんらしいので、是非これからも頑張っていい作品に出て欲しいものです。

<お詫び・修正>
本作品のご関係者より、ご指摘があり、上記文章を修正いたしました。兄役を米本来輝君と記載しておりましたが、米本君は弟の友人役で、兄役は別の方との事です(申し訳ありませんが氏名は不明)。また、中村君は子役としての活動を終了されているとの事でした(残念です)。

■短編ですが、余韻が残るラストシーン

子供映画のお決まりキーワード「いじめ」「一銭店屋(駄菓子屋」「秘密基地」「お化け、伝説」が全部揃っており、このあたりは少しマンネリかな、とも思いましたが。

ちょっと寄り道ですが、関東の方では駄菓子屋の事を「一銭店屋」なんて呼ぶのでしょうか。私はあまり聞きません。そういえば「10円屋さん」なんて誰かが言ってたのを聞いたような記憶があります。

ラストで、いつも反目している弟が、兄と素直に手をつないで歩くシーン。これ、イタリア映画「自転車泥棒」を思い出してしまいました。 生活のために自転車を盗み、息子の前で、群衆に捕まってボコボコにされた父。その父にやさしく手を差出し、手をつなぐ息子。父の目からは涙が。

この監督さんが古い「自転車泥棒」を観ていたとは思いませんが、いつも威張っている兄だけど、学校では苛められている辛い様子や、自分を心配してくれた事を思った弟が、兄に優しく理解を示すシーンは、少しホロっとさせられました。今後、本格的に監督になられて、いい作品を作られることを祈っております。

■余談 その他の収録作品から

「Movies-High6」の7編のショートフィルムですが、期待したのが、元少年俳優の山内翼君が出演する「放課後とキャンディ」という作品でした。実は、別件で「山内翼」でネット検索したところ、Amazonのサイトで彼の出演するDVDがヒットし、それで購入した訳です。

パッケージには「放課後とキャンディ」は国内の映画祭で2回も入選した実績があると記載されており、期待が高まったのですが、私にはハズレでした。最初に出てきた男子中学生ですが、昔の山内翼君の面影が全くなく、同姓同名の別人かと思いました。これ以上は言及しませんが、少年俳優の宿命かな。

7編のうち、映画祭で入賞している作品も含めて、やはりここで取り上げた「一銭店屋の帰り道」がベストだと思います。な〜んにも賞は貰っていませんが。


Movies-High 関連作品一覧です。こちらのレビューもご覧になって下さい。

ちりんちりん 2003年、Movies-High4
雨と冒険 2003年、Movies-High4
たからばこ 2004年、Movies-High5
一銭店屋の帰り道(本作品) 2005年、Movies-High6
ゴーゴー☆TOILET 2006年、Movies-High7




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