2015年は、ほぼ壊滅状態だった少年映画ですが、2016年は少し回復しました。完全な少年映画(少年俳優が完全に主役)はまだまだ少ないのですが、少年俳優が印象に残る作品がメジャーでもいくつかあり、この傾向が2017年以降も続いてくれることを祈っています。
2017年の2月も終わろうとしていますので、少し見切り発車ですが、2016年度の青輝賞を発表します。
いくつか見ておらずDVD待ちの作品もあり、もしかすると修正発表するかもしれません。
がらくた | 香川県を舞台に中学生の友情に涙です。(全国公開しないのが本当に残念) |
1.がらくた | 訳あり少年二人の秘密と友情。→ review |
2.僕だけがいない街 | 28歳の青年を演じる10歳の少年。→ review |
3.野生のなまはげ | 荒唐無稽ですが、最後は少しホロリ。→ review |
4.マザーレイク | 琵琶湖の伝説と少年の成長物語。→ review |
5.あの日、ぼくらの大脱走 | 和製スタンドバイミーの世界。→ review |
6.鉄の子 | いきなり姉弟になった少年少女の葛藤。→ review |
7.ぼくのおじさん | 北杜夫の世界を忠実に再現。大西君はさすが。→ review |
8.永い言い訳 | 出番は少ないものの鋭い印象の少年。→ review |
9.海よりもまだ深く | 是枝監督作品ですが、少し物足りない。→ review |
10.14の夜 | 地方の中学生の欲求不満を描く。→ review |
次点(3作品) | 家族の日、ぼくが命をいただいた3日間、イカれてイル? |
中川 翼 (10) | 難しい役を見事に演じきりました。共演の人気少女俳優にも負けません。 |
遠藤 健慎 (15) | 「がらくた」での正統派の少年俳優。堂々の演技でした。 |
中島 来星 (15) | 「がらくた」の少年役は本当に名演技。「14の夜」でも活躍。 |
中島 蓮 (12) | 「なまはげ」の小学生役。少年らしい肢体と声が印象に残ります。 |
福家 悠 (11) | 「マザーレイク」の主役少年は大熱演。(申し訳ありません。年齢は推定です) |
佐野 真白 (14) | 「あの日、ぼくらの大脱走」の主役少年。いい雰囲気でした。 |
大西 利空 (10) | 「ぼくのおじさん」主役の松田龍平さんを喰うほどの存在感。さすがです。 |
藤田 健心 (12) | 「永い言い訳」での演技。その表情と視線はずっと心に残ります。 |
次点 | 吉澤太陽(13)、佐藤大志(10)、犬飼直紀(15) |
萩原 利久 (17) | 「Innocent15」成長した姿にびっくり。童顔は消えましたが演技力は凄い。 |
昨年2015年は、最優秀もなにも、少年映画と呼べるものはたった1本しかありませんでしたので、本当に寂しい年でした。それに比べると、本年は豊作です。但し全てが2016年に初公開された作品ではなく、2016年になって初めてDVD化されたり、放送されたりしたものも含みます。
作品数は多いのですが、純粋な意味での少年映画は少なく「がらくた」と「僕だけがいない街」の2本で迷いましたが、後者は半分以上が藤原竜也さん主役のため、「がらくた」に決定しました。
主役クラスの少年二人が14〜15歳と、少年俳優としてはギリギリの年齢ですが、思春期の葛藤や甘酸っぱい感じを本当によく演じています。香川県坂出市のローカル映画ですが、彼らは東京の少年俳優。でも違和感は全く感じませんでした。
これは、監督さんが地元出身の方で、脚本もしっかり練られているので、標準語の少年たちが演じても浮つくことがなく、かえってストーリーに集中できたように思います。全国公開される事もDVD販売されることもなく、終わってしまうのでしょうか。日本にとって損失(大げさ?)かも。
■2016年少年映画ベスト10についてこの(あくまで個人の遊びかもしれませんが)青輝賞を設定以来の夢だった年間ベストテンが発表できます。年間10本以上も対象となる作品があったということです。
1位は前述の通り「がらくた」、2位は「僕だけがいない街」これも映画の脚本的には疑問が残る点が多々ありますし、批判も多い事は判ります。でも少年時代編が満点に近い、なにもよりも監督さんが少年俳優に対して真剣に取り組んでいるように見えることに感動しました。
3〜7位は本当に悩んだもので、順位の差は殆どありません。3位「野生のなまはげ」はナンセンスな内容ながら、意外にも正統派の少年映画でした。感動するような内容では決してないのですkれど。4位「マザーレイク」も、最近多い地方活性化の映画ですが、主役少年の熱演、友人の少年少女も爽やかでした。映画のプロモーションには疑問が残りますけれど。
5位「あの日、ぼくらの大脱走」はMIRAI PICTURES JAPANという小さな会社が製作しているシリーズの1作で、これまでも少年映画を作ってくれていました。劇場公開を鑑賞することは殆ど困難ですが、DVDで鑑賞できました。オーソドックスな作品。最近では経費難のせいかDVD販売しないケースも増えています。同社には今後とも大きく期待しています。
6位「鉄の子」は埼玉県川口市を舞台にしたローカル映画で、主役は少年少女ですが、少年俳優に重点が置かれていたように思います。7位「ぼくのおじさん」が一番悩んだ作品です。大西利空君だけに注目すればベスト3に入りますが、やはり主役はおじさんですので、この順位になってしまいました。
8位「永い言い訳」も、9位「海よりもまだ深く」も、大変高い評価の作品で、キネマ旬報ベストテンでも上位に選出されています。少年俳優もアクセントとして印象に残りますが、やはり映画内の比重としてはアクセントに過ぎません。一方で10位「14の夜」は完全な少年映画で、これも上位にしようか迷いましたが、暴力やエロス表現が気になりましたので、この順位です。
その他、岡山県の地方映画「家族の日」は残念ながら圏外。MAGIC BOYSの「イカれてイル?」は残念ながら映画以前の出来でした。また、実写版の妖怪ウォッチなど、DVD待ちの作品もありますので、修正する可能性もあります。
最優秀少年俳優賞は、中川翼君。
映画1位は「がらくた」にしましたが、少年俳優としては2位「僕だけがいない街」の中川翼君が出色の出来でした。彼は天才子役でもなんでもなく、普通の少年ですが、それが監督さんの指導次第でこんなにも演技が出来る子になるんだ、そんな好例だと思います。
でも彼は辛かったでしょう。共演の女の子はCM(ポカリ?)でも大活躍の美少女天才子役ですから、なにかと比較されてたりして。でもそのおかげか、映画の後は、弱小事務所にも関わらず、TVドラマなどで活躍するシーンが目立ちました。これからも期待の少年俳優です。
優秀少年俳優賞は7名。
まずは遠藤健慎君と中島来星君の中学生二人。映画「がらくた」はこの二人の友情というか、もう少し踏み込んだ関係まで匂わせるような、そん印象が強烈でした。正統派の遠藤君、個性派の中島君。もう1回くらい、どこかで共演して欲しいものです。なお中島君は「14の夜」にも出演していましたが、こちらはそれほど印象に残らず。
中島蓮君は「野生のなまはげ」での熱演が印象に残りました。今TVで見ない日は無い、元子役の坂上忍さんの事務所に所属との事で、今後はどのように育つのか期待しています。福家悠君は情報が殆どありませんが「マザーレイク」の主役熱演ぶりは立派でした。同作品のDVD化と、できれば福家君の次回作を期待。佐野真白君は、アイドル顔のイケメンでしたが、基礎がしっかりした演技力を感じました。
大西利空君と藤田健心君の二人は、ほかの子役たちとは一線を越えた実力というか、魅力を感じさせる演技でした。たぶん、これからも大物監督に起用されるのではと思います。できれば主役クラスの作品を作って欲しいところ。
その他、選外になりますが、吉澤太陽君。巨匠の是枝監督作品に出演できたことは、本当に幸運だったと思います。いくつか新人男優賞も受賞していますが、まだまだ彼自身の実力とは思いません。これからが役者の正念場と思って頑張って下さい。期待も込めて、今年はあえて選外としました。
佐藤大志君も、せっかく主役という宝物を貰ったのに、その意味をよく判っていない感じがしました。まだ幼いから仕方ありませんけれど。EBiDANのスタメンキッズというグループに所属しているようですが、俳優さんへの道も考えているようです。
特別賞は、萩原利久さん。
「INNOCENT15」は本当に衝撃でした。もちろん映画の内容も衝撃的でしたが、あの萩原利久さんの変貌ぶり。中学生になってもアヒル口が可愛い童顔でしたので、彼は年齢不詳タイプの可愛い系の青年に成長するものとばかり思っていました。
それが2016年の話題作「ディストラクション・ベイビーズ」の柳楽優弥さんを思わせるような、野生系の男臭い青年になっているとは(ちょっと悲しい)。でも熱演は熱演でした。
近年で目立つのは大手芸能事務所スターダストプロモーション所属の少年達の活躍です。既にジャニーズJr.よりも美少年を全国から集めているようですので、これからも少年俳優を輩出していく事と思います。
ただスターダスト(特にEBiDAN)はアイドル養成がメインのようですので、演技力という点では疑問符がつくことも。老舗の児童劇団出身の子役にはなかなか勝てません。ただ、吉澤太陽君(吉沢太陽に芸名変更)のように、俳優に特化する方々も増えているようですので、今後は期待できます。
毎年恒例ですが「キネマ旬報」の2016年の映画を総括号を読みました。新人男優賞の投票結果は、今年も特筆すべき事項はありません。吉澤太陽君が3票くらいあったのが救い。例によって「該当者なし」が7票。これは他の項目を通じて新人男優賞が最多。
次世代を担う新人男優賞に関心のない人なんて、映画の審査員の資格なしと思うのですが、世間の考えはそうではないようです。「ワシの興味は女性だけ」というようなオッサン審査員ばかりなのでしょうか。(ちょっと言い過ぎちゃいました。)
今年もまたゴタクばかり並べましたが、振り返ってみれば少年映画復活の年かもしれません。ただ外国作品については、もう国内配給作品を追っかける気力が無くなってきましたので、ノースエンド先生にお任せすることにして、私の方は邦画専門とします。